【地域とともにつくる医療】スーダンの村に届く巡回診療
Photo: Junji Naito
スーダンは広大な国で、地域によって暮らしや医療へのアクセスも大きく異なります。この記事では、2023年の内戦以前のハルツーム州シャルガニール地域を例に、村々を訪れる巡回診療と、そこで出会った人々の姿を紹介します。
医療は、誰もが安心して暮らしていくための大切な基盤です。地域の住民と医療に関わる人々が力を合わせながら、人々の健康を支えています。
村に届く医療のかたち
ハルツーム州シャルガニール地域では、広い範囲に村々が点在しており、医療を受けるために遠くまで移動する必要がある地域があります。そこで行われているのが、医療スタッフが車で村々を訪れる巡回診療です。
メディカルアシスタント(日本にはない資格で、医師の監督のもとで一定の診察や処方、医療行為を行うことができる高度な資格職です)や助産師さんなど7-8名がチームとして車に乗り込み、村々を回ります。
日本で巡回診療と聞くと、朝出て夜には戻ってくるイメージがありますが、この地域では東京都とほぼ同じ面積に医療施設が1つもなかったことから、2週間かけて村々を泊りがけで回る体制をとっています。
巡回診療では、一般診察に加え、子どもの予防接種、母子健診、栄養指導など、人々の健康を支えるさまざまな活動が行われています。人々が医療へ向かうのではなく、医療が人々のもとへ向かう。巡回診療は、その地域の暮らしに寄り添った医療の形の一つです。
診療の日、村に集まる人々
巡回診療の日は、朝早くから始まります。暑さが厳しいため、強い日差しを避けるためにも、スタッフは早朝から村へ向かいます。村に到着すると、診療が始まることを知らせるため、車に設置したマイクで住民へ呼びかけます。
「予防接種を受けるお子さんは来てください」
その声を聞いて、子どもを連れた家族が集まります。診療では、子どもの身長や体重を測り、成長の様子を確認したり、必要な予防接種を行ったりします。また、助産師が家庭を訪問し、母子の健康状態を確認することもあります。
巡回診療の日を、多くの住民が大切な機会として利用しています。遠く離れた場所から、ロバに乗って訪れる人もいます。
健康を支える地域のつながり
巡回診療は、診察を受ける場であると同時に、健康について知り、相談できる場でもあります。そこで得た知識や情報が、家族や地域へと広がっていくこともあります。
暑い中で活動するスタッフに、村の人々が水や飲み物を用意してくれることがあります。診療の時間が朝食と重なれば、食事を分けてくれることもあります。また、夜間の移動が難しい時には、村の家庭に泊めてもらうこともあります。
こうした交流の中で、医療を届ける側と受ける側という関係を超えたつながりが生まれていきます。地域の人々の理解や協力があってこそ、医療は地域に根づいていきます。
限られた環境の中で続ける工夫
広い地域を巡回するためには、さまざまな工夫が必要です。診療で使用する薬やワクチンの管理も、その一つです。ワクチンなど温度管理が必要なものを保管するため、電気が十分でない地域では、大きな氷と大型の金属製の箱を使って保管することもあります。
また、長期間村々を巡回する中では、燃料の補給や物資の準備など、診療以外にも多くの支えが必要になります。医療を届け続けるためには、その地域の環境に合わせた準備や工夫も欠かせません。
健康を守りながら暮らす人々
医療は、病気になった時だけ必要なものではありません。子どもの成長を見守ること、母親と赤ちゃんの健康を確認すること、病気を予防するための知識を得ること。こうした積み重ねが、日々の暮らしの中で健康を守る一助となっています。
この地域での巡回診療は、人々の暮らしの中にある医療の一つの形です。そこには、医療に関わる人々と地域の人々が、ともに健康を支えようとする姿があります。
