特定非営利活動法人ロシナンテス

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ニュース2023.07.04

結核医療への挑戦、富士フイルムのポータブルX線撮影装置を活用

ロシナンテスは、富士フイルム株式会社が開発したポータブルX線撮影装置を活用し、結核患者の早期発見を目指す事業を開始します。まずは、ザンビア共和国中央州の4つの医療施設において、テスト導入を行います。

結核の感染拡大を防ぐためには、早期発見が重要です。

結核検査では、最初にPCR検査を受け、陽性であれば治療へ、陰性であっても、疑わしい症状が残る場合は医師の診断のもとX線画像をとる必要があります。しかし、PCRテストを実施できる施設は限られており、X線画像をとれる病院は更に限られます。疑わしい症状があった場合、検査のために2-3時間かけてX線撮影装置がある病院へ行く必要があり、移動時間や費用の課題から、適切なタイミングで検査がなされていないのが現状です。
 
多くの医療施設で検査体制が整うことが理想ですが、現時点ではそうした体制確保は現実的ではありません。持ち運び可能な本装置を、複数の医療施設に順番に持ち込み検査を行うことで、最低限の設備で広い範囲をカバーできるようになります。今後1年間で、1台のポータブルX線撮影装置を4つの医療施設で共同利用し、テスト導入を行います。結核患者の早期発見に寄与することが確認できれば、他地域での拡大を目指します。
 
 
 
結核とは
 
結核は感染症の一つで、「結核菌」という細菌が体内に入り込むことによって感染します。例え感染したとしても、体が健康な状態であれば菌の活動は抑えられます。しかし、特に体内の免疫力が弱まると、菌が増えて発病します。咳や痰などから症状が出始め、重症化すれば命にも関わる病気ですが、現在では、適切な治療を受けることができれば完治できるとされています。
 
結核は、19世紀頃の産業革命による経済成長に伴って世界的に流行し始め、日本でも明治から昭和にかけて感染者が増加していきました。昭和20年代まで結核は日本人の死因の第1位であり、「不治の病」「亡国の病」などとも呼ばれ恐れられる病気でした。1950年には結核による死亡者が約12万人となるなど、猛威をふるっていました。その後は、治療薬の普及により死亡者数が減少していきましたが、2021年でもなお、日本では年間およそ1万2000人が新たに感染し、約1800人が亡くなるなど、完全に根絶はできていないのが現状です(※1)。
 
 
 
結核感染率の高いザンビア
 
地域別に見ると、アフリカは南東アジアに続き2番目に結核の患者数が多い地域となっています。その中でもザンビアは深刻です。世界保健機関(WHO)によれば、ザンビアでの10万人当たりの結核の感染者は307人となっています。感染者数は減少傾向にあるものの、アフリカの地域全体の平均212人と比べると、非常に高い感染者数となっています(※2)。 
 
アフリカでは、HIVによる結核の日和見感染も一つの課題となっています。ザンビアではHIVの患者数が130万人と言われ、世界の中でも患者数が多い国です。HIV感染者は結核を発症するリスクが高く、2021年には新規結核患者の34%がHIVにも感染しています。HIVと結核の合併は相互に病状を進行させることから、重複感染も大きな課題となっています(※3)。
 
ポータブルX線撮影装置とは
 
今回使用するポータブルX線撮影装置は、低線量で高画質なX線画像が撮影できる、約3.5kgの小型・軽量のX線撮影装置。元々は病院に来ることの難しい在宅患者の撮影を可能にすることを目指し開発されたもので、現在では、在宅医療をはじめ、結核検診など様々な場面で世界中の医療現場に貢献している。
 
 
参考:
 
(※1)厚生労働省“2021年 結核登録者情報調査年報集計結果”  https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000981709.pdf(2023/7/4)
 
(※2)the World Health Organization "Tuberculosis profile: Zambia" https://worldhealthorg.shinyapps.io/tb_profiles/?_inputs_&lan=%22EN%22(2023/7/4)
 
(※3)the World Health Organization "GLOBAL TUBERCULOSIS REPORT 2022" https://www.who.int/teams/global-tuberculosis-programme/tb-reports/global-tuberculosis-report-2022/tb-disease-burden/2-1-tb-incidence(2023/7/4)