施設での出産が増加!マザーシェルター建設後の変化
ロシナンテスが昨年の10月にムワプラ診療所にマザーシェルターを建設してから、半年が経ちました。その後どんな変化が見られたのか、最近のムワプラ診療所とマザーシェルターの様子をお伝えしたいと思います。
施設分娩率が大きく改善
ザンビア事業部では、建設後の2021年11月から2022年の2月までマザーシェルターの利用状況の調査を行ってきました。
ムワプラ診療所で産前健診を受診し、かつ、マザーシェルター建設後の2021年11月~2022年2月までの間が出産予定日となっている妊婦68名の内、57名(84%)がマザーシェルターで出産しました。これまでのムワプラ診療所での出産実績である39%を大きく上回る結果となりました。安全に宿泊待機できる場所がなかったために、遠くの病院へ行ったり自宅で出産したりしていた妊婦が減少し、マザーシェルターを利用したことが大きな理由です。
100%ではない理由としては、大きな病院で出産することを推奨されたケースや、実家の近くの病院での出産を選択したことが挙げられます。まずは初動として、地域の妊産婦さんたちの安全安心な出産に貢献することができました。
長く愛される施設をめざして
マザーシェルターの記録台帳を基に、利用状況の把握、施設の物品の管理も適切に行われるようになり、施設の持続性に寄与しています。また、職員が不在の場合にも利用した妊産婦が困ることがないようにとの思いから、利用方法に関するポスターも作成しました。ポスターに書かれている言葉は英語ではなく、現地の言葉で書くようにしています。
5%未満だった健診受診率が90%以上に!
2021年の12月にはムワプラ診療所に小型エコーを導入しました。こちらに関しても、マザーシェルターと同様に2022年1月から2月までの間に利用状況の調査を行いました。
ムワプラ診療所において産前健診を受診し、超音波検査を受けるべき時期がきていた91名の妊婦の内、84名(92%)の妊婦がエコー検査を受診しました。
ザンビアでは産前のエコー健診が推奨されていますが、ムワプラ診療所にエコーが導入されるまでは、ムワプラ地域の妊婦は車で2時間程かかる町の病院で受診するしかありませんでした。交通費や身体的な負担が大きいことから、産前のエコー検査受診率は5%未満で、ほとんどの妊婦がエコー健診を受けることなく出産日を迎えていました。そのため診療所でのエコー検査は、地域の女性たちが待ち望んでいたことでした。
エコーの導入によって、9か月を超えても逆子のままの状態を見つけるなどの成果を上げることができ、出産時に困難が伴うことが予想されるケースは事前に大きな病院へ行ってもらうという指導ができるようになりました。
また、これまで産前健診に夫が一緒に来ることはほとんどありませんでしたが、エコー導入後には妊婦さんの夫が健診へ参加し、一緒にお腹の中の赤ちゃんの様子を見て、夫婦で談笑している様子も見受けられました。これは、地域にとって本当に良い変化ではないかなと感じています。
持続可能な形を探りながら
ムワプラ診療所の職員や地域住民を巻き込んだミーティングで決めたこととして、エコー診断実施時には、妊婦に対して日本円でおよそ70円の支払いを求めています。集まったお金は、エコーのジェルを購入や、マザーシェルターで必要な備品の購入等に充てられています。ロシナンテスが地域を離れたあとも、コミュニティだけで施設を維持していくことができるようにするための取り組みの一つです。
ロシナンテスでは引き続き、ムワプラ地域の妊産婦や赤ちゃんの快適で安全な産前産後の生活に貢献できるよう、ムワプラ診療所の職員や地域のボランティアと一緒に協議を重ねながら、持続可能な形を探っていきたいと思います。