スーダン、とうとうテロ支援国家指定の解除が実現! #スーダン情勢
1993年から続いていた米国によるテロ支援国家指定が解除されたとの報に接し、嬉しさのあまり、思わず立ち上がり小躍りしてしまいました。
トランプ大統領が「スーダンをテロ支援国家指定から除外する」と宣言してから45日間、米国議会からはなんら反応がなかったのですが、2020年12月14日、とうとう米国が正式にテロ支援国家の指定を解除したのです。
スーダンはテロ支援国家なのか?
現在シリア、イラン、そして北朝鮮がテロ支援国家に指定され続けていますが、それらの国にはテロや武器保有等に関して国際的なニュースになるような事件がたびたび起こっています。しかしスーダンに関してはほとんどなく、なぜスーダンがテロ支援国家に指定されているのだろうと不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
1991年、母国であるサウジアラビアを追放されたウサマ・ビン・ラーディンが潜伏先に選んだのがスーダンでした。彼はそこで息をひそめながら地下組織を拡大させていきます。それがアルカイダです。
スーダン大統領のオマル・バシールはビン・ラーディンのスーダン滞在を認めていましたが、それが自国にとって都合が悪いことと判断し、1996年彼を国外追放にします。彼はその後アフガニスタンに潜伏、そして2001年の米国の同時多発テロへとつながっていきます。
スーダンは彼を追放したものの、テロ支援国家のレッテルは貼られたままとなりました。
指定解除への長い道のり
テロ支援国家指定解除がなされる機会は過去に何度かありました。詳しくはこちらのブログをご一読いただければと思いますが、いずれも指定解除には至りませんでした。ICCから国際指名手配されているバシール大統領が辞任しない限り、指定解除はないとの憶測も流されていました。
昨年、そのバシール大統領が国民からの大きな反発のために解任されたため、今度こそは指定解除になると期待されましたが、スーダン国内の経済が悪化していくだけで、結局進展はありませんでした。
大統領選挙が近づいて…
今回急激にことが動き出したのは、米国の大統領選挙が近づいてきてからです。
まず米国は、スーダンに対して2つの条件を提示しました。ひとつはテロへの補償です。同時多発テロへの補償には言及をせず、1998年に起こったケニアとタンザニアの米国大使館へのテロに対してと2000年の米国の駆逐艦へのテロの補償をスーダン政府に要求しました。その額は3億3500万ドル(約363億円)です。経済状況が悪化している状況ではありますが、スーダンは米国への補償を了承します。
もうひとつはイスラエルとの関係です。トランプ大統領はアラブ社会とイスラエルとの関係修復を働きかけていて、アラブ社会の一員であるアラブ首長国連邦、バーレーンの2か国について、イスラエルとの国交正常化を支援しました。そしてスーダンにも同様の働きかけを行っていました。イスラエルとの国交正常化に関して、当初スーダン暫定政権は、選挙を経て新しい政権が樹立されてから検討するとして回答を保留していましたが、トランプ大統領の強い働きかけがあったのでしょう。トランプ大統領自身が10月23日、スーダンとイスラエルとの外交が樹立したと発表するに至りました。当事国の発表ではなく米国の大統領からの発表であったことは、大統領選挙を意識したことの表れでしょうが、なにはともあれスーダンとイスラエルの国交は正常化されました。
スーダン国民の一部は、自国が米国に多額の賠償金を支払うことになり、それに加えて心情的に好きになれないイスラエルとの国交樹立が決まったことにより、「踏んだり蹴ったりだ」と嘆いていましたが、それによって念願のテロ支援国家指定解除という大きな果実を得たことになります。
あまり影響の出なかった経済制裁の解除
実はスーダンの発展を妨げていたもう一つの制裁がありました。これが米国による経済制裁です。20年来にわたる経済制裁が解除されたのが2017年でした。これはオバマ大統領の任期の終わり頃であり、そう考えるとスーダンは米国の国内政治に翻弄されている気もしますね。
この経済制裁に苦しめられてきたスーダンは、解除によって随分と恩恵を受けるのではと思われましたが、米国資本のケンタッキーとピザハットが出来たくらいで、期待されたような経済的な恩恵はほとんどありませんでした。というより、以前よりもさらに経済状況が悪化していき、最近はインフレ率が200%を超えるという事態にまでなっています。経済制裁が解除されてもテロ支援国家指定が解除されない限り、スーダンとは付き合えない、スーダンでの事業が行えないと国際社会は見ていたのでしょう。
今度こそ発展への布石となるか
ようやくスーダンの発展の最後の足かせとなっていたテロ支援国家指定が解除されました。経済は極めて悪い状況ですが、その中で明るい光が見えてきたようです。