特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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スーダン2007.08.23

「掏摸」と「掏児」読めますか?

移動にはいつもバスを使っている。
運賃は乗車地点から終点までの距離によって異なるが
ハルツーム市内では約18円から60円の間である。
地元の人の生活の一部を共有できるので、とても好きな時間だ。
今日もバスで市の中心部に向かった。
スーダンでは日本や韓国の中古のバスが主に使われており、
それは車体に残る文字からわかる。
いくつものバスには
「○○市健康ランド」「○○幼稚園」「○○スイミングスクール」などの字が並ぶ。
時に「○○温泉。ラドンの湯」などと書かれたバスを見ると、温泉が非常に恋しくなる。
暑い中で水浴びをするのもいいけれど、湯に浸かって手足を伸ばすのも素晴らしい。
閑話休題。
バスには後ろの席から詰めていくというルールがある。
それで、今日も僕はいつもどおりに空いている席に向かった。
2人がけのシートの片方が空いていたので、そこに行くと
先に座っていた男は通路側に寄り、僕を窓際に座らせた。
30歳程度、痩せ型で長身、普通の身なりをしている。
僕の隣に座るその男は腕を組んだ。
男の片方の肘で僕のポケットは隠れる形となった。
おや?
ポケットにつっこんである僕の財布が引っ張られている。
男の肘の下で、ゆっくりと、だが確実に動いている。
彼のもう片方の手が肘の下で動いてるようだ。
僕は体を揺らした。
すぐに男は組んだ手をほどいて、何事もなかったようにしている。
しばらくすると、その男はまた腕を組み始めた。
すると、少しずつ財布が外に出て行く。
座った状態なので、ポケット内の財布は太ももに密着しており
ズレていくのがはっきりとわかる。
あー、スリか。
せっかく前ポケットに財布を入れてるのに。
腹立たしい行為を適当に続けさせたところで、男の肘をバッとどかした。
僕の財布へと伸びていた手を見て「泥棒!」と大きな声で言った。
周りの人が、がやがやと騒ぎ出した。
僕は立ちあがり、全員に聞こえるように「彼は泥棒だ!」と言った。
「僕の財布をずっと引き抜こうとしていた」
しばらく黙っていた男は「こいつ頭がおかしいんだよ」などと、とぼけながら言った。
本当のことは僕と犯人(大根役者)しか知らない。
しかし陪審員となった乗客の判決で彼は「有罪」だった。
勝訴!
冷たい視線が犯人にぶつけられる。
男はバスから叩き出されるまえに、逃げるように降りて行った。
これで懲りてくれたらいいのだけれど。
その後、僕は近くの人たちにゆっくりと彼の手口を説明した。
みんな「なるほど!」と納得していた。
家で調べたらアラビア語でスリは「ナッシャール(????)」
この事件により知ってる単語がまた一つ増えた。
ちなみにタイトルの漢字は「すり」。知ってる漢字も増えた。
常に前向きだ。
荒井繁