スーダンの菩提樹
日本から農学部、薬学部の先生がスーダンに学会の参加のために、いらしており、
先生方の希望により、スーダンの植物園に行きました。
私は以前に二度ほど訪問したことがあります。
学会が終了してから訪問したので、もう門は閉ざされていました。
しかし、誰か中にいるはずと、門をたたいていると、思った通りに中から人が出てきました。
「日本からのお客さんが、中を見たいと言っています、入ってもよいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
こんなのが、簡単には入れるのがスーダンの良いところです。
私は前に訪問したときと大いに違うのは、今回は専門家と一緒だということです。
「これは何という花ですか?」
先生方は丁寧に説明してくださいます。
年を取ってから、どうも花や植物を見るのが好きになりました。
若いときには見向きもしなかったのに。
歩いていると大変良い匂いがしてきます。
「これはジャスミンの匂いです」
気分が癒されます。
そして、目の前に大きくそびえる木があります。
植物園の真ん中に位置し、葉が緑から黄色みがかり、それが優しい夕陽を浴びて
とてもきれいです。
「菩提樹の樹です。葉っぱの先が尖っているでしょう、それが特徴です」
私は今まで10年近くスーダンにいますが、葉が色づいたのを見たの(認識した)は、初めてですし、
夕暮れ時ということもあり、緑と黄色の入り混じった、菩提樹の樹が神々しく見えました。
お釈迦様がこの樹の下で悟りを開いたんだな、と思いながら、しばし見つめていました。
そして、どうしてこの樹がスーダンにあるのか、考えました。
おそらく、英国がスーダンを支配しているときに、植物園を作り、インドから菩提樹を持ってきたのかなと考えました。
落ちていた緑と黄色の入り混じった葉っぱを懐に忍ばせました。
ハルツーム大学学長の晩餐会があり、明日の打ち合わせなどを行い、深夜、家に帰ってきて
菩提樹の葉っぱを見つめました。
事あるごとに、植物園に行き、あの菩提樹を眺めて付けていこうと思いました。
川原尚行