特定非営利活動法人ロシナンテス

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スーダン2011.02.18

バレンタインデーのお天道様からの素敵な贈り物

先日のバレンタインデーのことです。
その前日にロシナンテスのスタッフの家が火事になりました。
こちらの家は、藁ぶき屋根ですので、面白いように燃えます。
火が付いたら、小さなうちでは、まだ消火活動はできるのですが、いったん屋根に火が付いたら、もうどうしようもありません。延焼をいかに防ぐかが重要となります。
火事のお見舞いに行ってきて、お見舞金を渡したところでした。
そして、次の日、栄養不良の子供のフォローに村の中を駆け巡り、それも終わり、その資料を整理していると、村人からの通報が来ました。「急患!」と思って、急ぎ準備をしていると「火事だ!」との声です。
診療所のスタッフと一緒に火事現場まで駆けつけます。
まだ、初期の段階でしたが、3つの家が燃えているのがわかります。
如何に延焼を防ぐかが問題で、燃えるものを火事現場から遠ざけ、限りある水を利用して延焼しそうな場所に重点的に消火します。
そして、燃え移りそうな家の中から家財道具(そんなにありませんが)を外に引き出します。
これを村の人総出で、行います。
私自身も、過去に火事に遭遇したことがありますので、上記の要領で、消火活動をおこないます。消火活動をしながら、江戸時代の火消しもこんなだったのかな、と思いを江戸時代に馳せながら行っていました。また火消という作業を行うにあたって、地域社会の結びつきも強かったのかと現在のスーダンの村の様子を見ながら思っていました。
結果、延焼は防ぐことができましたが、三軒の家が全焼しました。
ハサンの長男で新婚のアワッドの家も焼けました。
出火した家の夫人は、自分の小さな子供が焼け死んだと思い込み、そのショックで倒れこんでいましたが、隣の奥様が見事に助け出していました。
消火の後は、その夫人の手当てを行いました。
不幸中の幸いで、けが人は出ませんでした。
それから、100キロ先にあるガダーレフに車を走らせ、別の仕事をこなし、これも予想以上に時間がかかってしまい、再び100キロの道のりを、車を走らせ村に戻っていました。
たぶん、相当に疲労していたのでしょう。
国道から村に入る道(ここにロシナンテスの看板が立っています)を数メートル行き過ぎてしまいました。ほんのちょっとですから、バックすればよいのですが、国道が高くなっていますので、そこを降りるのに、ランドクルーザーだから難なく行けると勝手に判断しました。
しかし、車で国道を降りかけてから、考えを変え、やっぱりバックをしてきちんとした道から行こうと、バックを試みますが、後輪がスリップして動きません。
車から降りて、前方を確認しようにも、ハンドブレーキのみでは停止できないと判断し、
「えいっ!前に進め!」
と覚悟を定めて、前進させたところ、見事国道の下を走らせている排水溝に落ち込んでしまいました。
止まっていてから、溝に落ちたため、そんな衝撃はありませんでしたが、道行く車からは相当な事故のように見えたのでしょう、二台の車が停止をしてくれて、私のところに駆け寄ってくれました。私が生きていたこと、そして怪我がなかったことから、信じられないと救出した人々は口にしていました。
私は、怪我がないことよりも、数日前に事故が多いとロシナンテス日本事務局長からお叱りを受けたばかりで、その落ち込みのほうが大変でした。
頼みのハサンに電話をしますが、かかりません。
ガダーレフにいる辰野さんに電話をします。
辰野さんは、スタッフのフセインとともに現場に駆けつけるといい、電話を切りました。
やがて、村から大挙して村人がやってきました。
ハサンの車、救急車、小型トラックに大型トラックに人を満載して救助活動に来てくれたのです。
彼らの力を汗せて、ランドクルーザーを溝から引き上げることができました。
すごい!の一言です。
私自身、事故を引き起こして、怪我はなかったものの、心理的に相当に落ち込んでいたのですが、村の人たちが、私のところにやってきて
「怪我がなくてよかったね」
と皆が言ってくれ、その後、村の人たち総出の車の引き出し作業を見ていると、落ち込みから脱することができました。
本当に、私が助けているのか、助けられているのか、わかりません。
でも、ここに何か国際協力の本質があるような気がします。
彼らから助けられていると思えることこそ、国際協力の神髄のような
随分と甘えた感じですが、そう思えて仕方ありません。
その後、村の中に入ると、私の姿を見て涙ぐむ人までいます。
辰野さんがハサンの奥さんに電話をしたのですが、これがうまく伝わってなかったらしく、
「川原が交通事故で死んだ!」
と村の中でなっていたそうです。
その報せで、多くの村人が泣き崩れたようで、私の姿を見ると、今度は安堵の涙でした。
次の日、キャンディーを大量に購入して、村の人たちに配ってまいりました。
イスラムの世界では、何か不幸なことが起きて、そこから脱すると、こうして感謝の意味を込めて、配りものをします。
そして、素直な気持ちで、モスクに行き、感謝の気持ちをお天道様に伝えました。
村人たちは、
「お前は、立派なイスラム教徒だ!」
と口々に言っていました。
私は決してイスラム教徒ではありませんが、私のやっていること、思っていることはイスラム教徒と同じだと言われます。
火事から事故まで、私と村の人たちの心をつなぐものでした。
素晴らしいバレンタインデーの贈り物をお天道様から、いただきました。
川原尚行