「アフリカから学ぶ国際教育プロジェクト」報告会を開催しました
昨年度より、「アフリカから学ぶ国際教育プロジェクト」で、北九州市の小中学生に出前授業を行っている川原佳代です。このプロジェクトは、ロシナンテスと学校が連携し、北九州市の子どもたちにグローバルな視野を育む学びの場を提供するもので、北九州市の「企業版ふるさと納税を活用した協働のまちづくり推進事業」として実施しています。自分自身のアフリカでの体験やロシナンテスの活動、スーダンの現状などを授業の中に取り込み、今年度はのべ1,600人以上の児童に出前授業で話をしてきました。

今日は、このプロジェクトのまとめとして行った3月8日の報告会の様子をご紹介したいと思います。報告会には出前授業を受けた子どもたちも参加してくれました。
教員の皆さまから取り組みの紹介
第一部では、このプロジェクトで授業に取り組んでくださった3人の先生に代表で登壇していただき、各校の取り組みを紹介いただきました。中学校では平和学習としての取り組み、小学校では複数の教科をまたいでの授業実施や、若年の先生が参観できるように校内研修としても行ったことなどをご紹介いただきました。

実際の出前授業では、打ち合わせで聞いたことをもとに、スーダン・ザンビアの文化や生活・ロシナンテスの設立経緯・活動の様子そしてスーダンの内戦の現状を伝え、児童生徒のそれぞれの心に未来への種を蒔いています。この授業を通して、児童・生徒が当たり前や平和について自分ごととして考えることができたという話や、授業を聞いた若年の先生が新たに実践された話を聞くと、蒔いた種がもう芽を出そうとしているようで、とても嬉しく思います。理事長川原からは今後の可能性として、学んだことを地域に広げたり、海外とオンラインで繋いだりという提案がありました。
理事長川原へ子どもたちから質問
第二部では「川原尚行に直接質問を!」ということで、参加した小学生や高校生、大人の方からたくさんの質問をいただきました。

Q;「自分たちはランドセルで通っているけれど、スーダンの人たちはどんなものを持っていっているのですか?」
Q;「スーダンの薬は日本の薬と違いますか?」
Q;「病気になったことはありますか?」
Q;「現地の人とどうやって仲良くなっていったのですか?」
Q;「コンビニなどにある募金のその後はどういう使われ方をするのでしょうか?」
Q;「今の国際状況を踏まえ、今後どのように活動を展開していかれますか?」 などなど。
子どもたちからの質問であらためて、気付かされたこと、考えさせられたことも多く、大人の私たちも良い学びの場となりました。また案内を見て参加してくださったガーナ出身の方は、黄熱病の研究に従事した野口英世さんの紹介もしてくれ、子どもたちの学びの幅も広がりました。
ゼインさんから学ぶ
最後に理事長川原が先月スーダンに行った際に撮ったゼインとの写真を見せました。
「これ誰だかわかる?」
「あっ!靴の人」「サッカーの人!」

ゼインは出前授業で必ず登場するスーダン人の一人です。高校3年間を北九州の九州国際大学附属高等学校で過ごし、卒業後はスーダンに戻り、日本で学んだことを活かし、首都にスポーツ店3店舗を経営していました。しかし内戦でそのスポーツ店は全てなくなりました。内戦開始から2週間後、やっと彼と連絡が取れた時、彼は日本で学んだ言葉は「これから」という言葉だと教えてくれました。どんなことがあっても前に進んでいく日本人の素晴らしさを一言で表したこの言葉。私たち日本人は意識することのないこの言葉。気がつかないうちに自分を前向きにしてくれるこの言葉。
それから3ヶ月後、彼は日本で学んだ「これから」を行動に移していました。逃げた町で、スポーツ店の再開準備。あと3日でオープンというところで、軍がこの町に向かっているとの情報が入りました。完成した店はそのままにして、商品をトラックに載せ再び逃げました。そして現在家族はウガンダに避難しています。
出前授業で、子どもたちは、ゼインが日本で学んだスポーツシューズの陳列の仕方や緑の人工芝の新しい店舗の写真を見て、歓声を上げていました。そしてオープンすることなく再び逃げないといけないという現実になんとも言えない気持ちになっているようでした。どんな状況でも「これから」を考えて、前に進んでいるゼインの今の姿に子どもだけでなく、大人も勇気をもらったのではないでしょうか。
これからも「未来へ心に種をまく」授業を
スーダンの内戦が始まってもうすぐ3年目に入ります。出前授業を受けた児童や生徒たちと共にスーダンにも当たり前の平和が来ることを祈っています。
これからもスーダンやザンビアの文化やロシナンテスの活動、スーダンの内戦などを織り込んだ未来への心の種まきの授業を展開していきたいと思います。
