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コラム2025.04.21

「大相続時代」の到来~遺贈寄付は社会を変える力になるか

「大相続時代」という言葉を聞いたことがありますか。来年2025年に、終戦直後の第一次ベビーブームに生まれた「団塊の世代」がすべて75歳を越えることになります。これにより、近い将来、このシニア世代が保有する資産が相続によって次の世代に引き継がれ、大規模な資産移動が起こると予測されています。

こうした社会背景の中で、「遺贈寄付」に注目が集まっています。遺贈寄付とは、社会貢献活動に役立てることなどを目的として、遺言によって遺産の一部または全てを、公益法人、NPO法人などの団体に譲渡することをいいます。NHKの調査によると、遺贈寄付件数は年々増加しており、令和3年には973件、総額約278億円にのぼりました。また日本財団遺贈寄付サポートセンターによる調査では、60~70代の2割以上が遺贈や寄付に関心を持っていることがわかっています。

2025/5/15には、遺贈や相続について考え学ぶイベント「最初の一歩を踏み出す『エンディングノートの書き方・活かし方』~自分らしい相続・遺贈講座~」を福岡県北九州市で開催予定です。

少子高齢化、相続への価値観の変化が後押しに

では、なぜ遺贈寄付への関心が高まっているのでしょうか?

その背景には、相続に対する価値観が変化していることが挙げられます。日本では、少子高齢化が世界でも類を見ないスピードで進んでおり、「おひとりさま」や子供のいない夫婦世帯が増加しています。このような家族構成の変化は、相続への考え方にも変容をもたらしています。「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」によると、2人以上の世帯で「子どもに財産を遺したい」と考える世帯は45.4%で、20年前に比べて19%も減少をしています。従来は「家族にすべての財産を相続させる」という考え方が一般的でしたが、近年では「財産を社会・公共に役立てたい」という価値観が広がり、相続人以外へ財産を託すことを考える人が増えているのです。

遺贈寄付で実現できる3つのこと

遺贈寄付には左記のような特長があります。

1)財産の使い道を自分で選ぶことができる

通常相続が発生した場合、遺言書がなければ法定相続人に財産が分配されます。法定相続人がいない「おひとりさま」世帯では、その財産は国庫に入ります。一方遺言があれば、誰に財産を引き継ぐか指定することができます。遺贈寄付は、遺言書に希望する寄付先を記載することで、人生最後のお金の使い方として、自分が作りたい未来や、応援したいことにお金を託すことができるのです。

2)老後の生活資金を心配せずに寄付できる

遺贈寄付は、自分の死後に残った財産から行うため、生前の生活資金には影響しません。たとえ遺贈寄付の遺言書を作成していても、死亡時に遺贈するとしていた財産がなくなっていた場合、寄付の義務は発生しません。そのため老後のお金を心配することなく安心して日常生活を楽しむことができます。

3)税金の優遇措置が受けられる

相続財産が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると相続税が課されます。しかし、遺贈寄付した財産には相続税がかからないため節税効果があります。また、寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人、認定NPO法人などである場合、相続人が行う「準確定申告」の際に、遺贈した金額を寄付金控除の対象とすることができ、所得税の節税にもつながります。

遺贈寄付の課題、普及のためには

このように遺贈寄付には様々な特長がある一方で、その普及にはいくつかの課題も残されています。

日本財団遺贈寄付サポートセンターの調査によると、遺贈に際して懸念する点として、①必要な手続きがわからない、②寄付先が自分の意思に沿って使ってくれるか不安、③どこに相談したらいいかわからない、といった声が多く寄せられていることがわかりました。遺贈寄付には遺言書の作成が必要なため専門家への相談が推奨されますが、適切な相談先がわからないことが1つのハードルとなっています。また寄付先団体選びに関する不安も大きく、遺贈寄付を躊躇する要因となっているようです。

こうした課題を解決するため、遺贈寄付に関する情報提供や相談体制が拡充されています。全国レガシーギフト協会、日本財団、日本承継寄付協会等では、専門家へ遺贈寄付の相談ができるほか、寄付先が決まっていない人への団体の紹介も行っています。また遺贈を受け入れているNPO等の団体も、専用窓口の設置や専門家との連携など、大手を中心に受け入れ体制を充実させています。ロシナンテスでも、よりきめ細やかな対応ができるよう体制を整備しているところです。

遺贈寄付の普及は、社会にお金を循環させ、より良い未来を創る大きなインパクトになる可能性があります。自分の財産を誰にどのように託していくか、これを機会に一度考えてみてはいかがでしょうか。ロシナンテスは、非営利セクターの一員として、これからもより多くの方に遺贈寄付に関心を持っていただけるよう尽力していきます。

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