特定非営利活動法人ロシナンテス

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戦闘地以外にも様々な影響が……内戦が続くスーダンの最新状況

スーダンの首都ハルツームで国軍とRSF(Rapid Support Forces:ダルフールの民兵組織を起源とする準軍事組織)による軍事衝突が発生してから、1年半が経過しました。※内戦勃発の経緯についてはこちら

スーダンの最新の状況について、わかる範囲でご報告します。

ロシナンテスの事業地の最新情報

内戦勃発以降、事業地への訪問は叶っていませんが、都度連絡を取り合って状況を確認しています。最初の活動地であるガダーレフ州、水事業や学校建設を行った北コルドファン州の事業地について、現在の状況をお伺いしました。

暮らしはどのように変わりましたか?
ガダーレフ州の村落部にも他の地域からの避難民が流入しています。彼らには家も公的支援もないため、地域住民がテントや一時的な住居を提供しています。避難民は私たちに頼っているため、村の資源に負担がかかっています。物価は内戦前の10倍で、物流に関する支援も受けられていません。飢えを避けるために、農産物の収穫期に期待しています。また、洪水で農業に影響が出ており、家屋にも被害が出ています。地域によってはコレラやマラリアが流行しています。

ロシナンテスが支援した給水所や診療所はどうなっていますか?
給水所も診療所も問題なく機能しています。診療所には避難してきた内科医がおり、スタッフも引き続き働いています。個人的な努力によって薬も入手できており、検査室、薬局も機能しています。ただタイヤとバッテリーに問題があり救急車は動いていません。

暮らしはどのように変わりましたか?
内戦によって開発計画は停止し、住民は戦闘による暴動や犯罪行為を恐れながら生活しています。私たちの地域にも避難民が流入しています。戦闘や洪水の影響による道路の閉鎖や損傷で商品の運搬が難しくなっていることもあり、商品の不足が深刻です。物価は2倍に上昇しました。住民は飢えを避けるため、農作物に頼っています。経済は不安定で、失業者が増えています。

ロシナンテスが支援した給水所や診療所はどうなっていますか?
残念ながら、緊急事態のため学校は閉鎖されています。州都オベイドの学校が襲撃される事件があり、安全確保ができないため再開の見通しは立っていません。建物自体はきれいに保たれています。給水設備は良い状態で機能していますが、避難民の流入で需要が増加し、古い給水施設の給水量が減っているため、負荷がかかっています。

戦闘の状況はどうなっているの?

当初、国軍が圧倒的優位に立ち戦闘は短期間で終結すると考えられていました。しかし、予想に反してRSFの戦闘力が高く、首都ハルツームやダルフール地域を中心に各地で侵攻を行い勢力を伸ばしてきました。

赤が国軍、黄色がRSFに支配されたエリア(作成:Thomas van Linge)

これまで、近隣諸国やアメリカ、国際機関等が何度も仲介努力を行っていますが、停戦協議は実現していません。

民主化を目指す過程で文民派を排除した国軍側の行いが引き起こした内戦ではありますが、長引く理由は諸外国からの資金が尽きないためです。スーダンは、海上貿易の要衝である紅海に面した国です。金の埋蔵量は世界で5本の指に入るとみられ、農産物や家畜を周辺諸国に輸出する食糧生産の要でもあります。こうした地政学的な面から、周辺国は様々な思惑をもって両者への関与を行っています。

深まる人道危機

これまでに最大15万人が命を失い、人口5千万人のうち、1千万人以上の人々が国内外で避難生活を送る深刻な人道危機が続いています*1。

スーダン国民健康保険基金(NHIF)によれば、国民の3人に1人が支援を必要としている状態ですが、そのうちの15%にあたる230万人にしか支援が届いていません。世界保健機関(WHO)によると、紛争の影響が深刻な地域の医療施設の70~80%、そしてその他の地域の医療施設も約45%が、ほとんど稼働していないか閉鎖されていると推定されてます*2。

ハルツームにあるイブン・シーナ病院は、日本政府が無償で建てたもので、150床を抱える三次救急病院としてとてもよく機能していた病院です。岡山大学の先生方がスーダンの先生方に教えた当時の先端医療の技術が根付き、スーダンでは初となる生体肝移植を成功させるまでになっていました。スーダンでもトップクラスの機能を持つ病院となったことで、多くの人が日本に感謝の気持ちを持ってくれていました。

ロシナンテスの設立前、理事長の川原がイブンシーナ病院で働いていた時代の写真

この病院も、民兵に襲われ多くの入院患者が追い出されました。透析治療の拠点でもあり、透析ができなくなって静かに命を落としていった患者さんがたくさんいます。

また、医療や水のインフラが破壊されたことに加え、ワクチンの接種率も大幅に低下したことで、コレラ、マラリア、デング熱、麻疹、風疹など複数の病気が発生しています。ユニセフによると、5歳未満の子ども340万人がこうした感染症の危険にさらされていると推定されます。

内戦によって農業ができず、今後大規模な飢きんが来ることも予想されています。実際今年の8月には、40万人以上が避難民として暮らす北ダルフール州のザムザム・キャンプで、飢餓の最も重い分類である「飢きん」の発生が確認されたことが発表されました。スーダン人口の2人に1人が飢餓に直面しており、ザムザムのほかにも13の地域が飢きんの瀬戸際にあり、国際社会からの一刻も早い支援が求められています。

職員やスタッフはどうしているの?

軍事衝突勃発当時は職員の家の近くでも空爆が起き組織に大きな緊張が走りましたが、幸いにも日本人職員は無事国外へ退避することができました。

現地スタッフも、地方都市や国外へ逃れることで安全を確保できていますが、それぞれが大変厳しい状況にあります。

長年ロシナンテスとお付き合いのあるスーダン人の青年ゼインさんからも、折に触れてメッセージをいただいています。

ロシナンテスでは、安全確保やビザ取得の難しさの面からいまだ日本人職員の再入国が叶っていませんでしたが、今年中にはスーダンに入国できる見込みです。身の安全には最大限の注意を払いつつ、必要な支援を届けられるよう尽力いたします。

渡航後のスーダンの様子については、また随時アップデートいたします。引き続き、スーダンの状況にご関心をお寄せいただけましたら幸いです。


*1 The Economist
*2 UN OCHA