安心して出産できる地域にするために。マザーシェルターが完成しました
ザンビアで建設を進めてきたマザーシェルターが完成しました！
ザンビアの中央州チサンバ郡では自宅から診療所までの距離が遠く、診療所に宿泊できるスペースもないことから、妊婦さんは出産予定日間際に歩いて診療所に向かわなければなりません。その結果、自宅で出産したり、診療所に向かう途中で出産したりするケースが多くみられます。医療施設以外での出産はリスクが大きく、母子ともに危険な状態にさらされていました。
こうした状況を改善するため、ロシナンテスはチサンバ郡チコンコメニ地域でマザーシェルターを建設しました。
2021年にチサンバ郡ムワプラ地域で建設したマザーシェルターについてはこちら。
マザーシェルターで安心・安全な出産をサポート
マザーシェルターは、妊婦さんが出産予定日前から滞在し出産に備えられる施設です。
チコンコメニ地域は、郡内でも自宅出産数が多く、妊婦さんの約6割が診療所での出産を避けていました。調査の結果、水・電気の供給不足とともに、出産待機場所がないことが診療所の満足度を下げていることがわかりました。マザーシェルターがあれば、妊婦さんは陣痛前から滞在して診療所での出産に備えられ、万が一の際には適切な処置を受けられる可能性が高まります。
産前健診から出産、産後の健診までを安心して受けられるよう、マザーシェルター内に下記のような設備を整えました。
- 出産待機室（宿泊できる部屋）
- 産後経過観察室
- 分娩室職員の当直室
- 付添家族の宿泊室
- シャワー、トイレ
- 簡易調理場
小型エコーを導入、井戸の掘削も
本事業ではマザーシェルター建設後、産前健診で適切な診断ができるよう、村落部で利用可能な小型エコーを1台導入しました。これまでこの診療所ではエコーを利用しておらず、トラウベ聴診器と呼ばれる伝統的な診断器具と触診のみで診察を行ってきました。しかし、これだけでは、妊婦さんと赤ちゃんの正確な情報を得ることは難しく、危険なケースの見落としも発生していました。
導入したエコーは、パソコンやタブレット等につなぎ、専用のアプリケーションをダウンロードするだけで使用できるシンプルなものです。小型ですが、心音や羊水の量、胎盤の位置、頭や身体の大きさを知ることができます。これにより逆子や危険な兆候を的確に把握することができ、万一の場合も上位の病院を紹介するなど適切な対応をとることができます。
チコンコメニ診療所のスタッフに使用方法の研修を行い、すでに産前健診での利用を開始しています。今後は、新生児死亡率や妊産婦死亡率の低減に繋がる指標として、妊産婦の健診率やエコー受診率も重要視していく予定です。
また、診療所には井戸が1基ありましたが、検査の結果汚染されていることがわかったため、新たな井戸を掘削しています。これにより、診療に不可欠な清潔な水を供給できるようになりました。
安心して出産できる地域へ
チコンコメニ地域では、前述のとおり設備の問題から診療所での出産を避ける妊婦さんが多かったことに加え、上位の医療機関への紹介数も他の地域と比べて大幅に多く、2022年度は自宅出産が129件、上位機関への紹介が121件と地域の医療施設の中で10倍以上の突出した件数でした。十分な機能を備えたマザーシェルターを建設し、それに対する妊婦の認知が進むことで、以下のような効果を見込んでいます。
- 自宅出産、路上出産の減少
エコー導入により出産予定日の比較的正確な計測が可能になることから、前もって妊婦さんがマザーシェルターに滞在し、余裕をもって出産に臨めるようになります。その結果、自宅出産や路上出産の件数が減ることが見込めます。
- 産前健診、産後健診の受診率の増加
マザーシェルターでは、産前健診、産後健診を目的とした個室で健診を受けることができます。村落部の診療所は、診察室が1つしかないなどの理由でプライベートが保たれないことが多く、妊婦さんたちからの要望を受けて設置を決めました。それだけでなく、多目的スペースでは母子保健に関する意識改善の活動を実施できることから、健診のタイミングの重要性が認知され、産前健診、産後健診の受診率が改善することが期待されます。
- 施設出産数の増加
提供されるサービスの質が向上することにより、マザーシェルターでの出産数が増えることが予想されます。利用者は遠方の医療施設で出産をせずにすみ、移動費などのコストを抑えることができます。
完成記念に開催したオープニングセレモニーには、たくさんの地域住民の皆さんが集まってくださり、関心の高さが伺えました。
日頃よりあたたかいご支援をいただいております皆さま、本当にありがとうございます。また改めて、妊婦さんたちの様子などお届けできればと思います！
