冷静な抗議
岩間さんを見送りに空港へ。
今回の帰国は、JICAでの研修、さらに九州の本部での今後の戦略を練りに、そして日本で骨休めの予定です。
ハルツーム空港は、見送る場所がなく、空港の入り口で
「それじゃあ」
と言って、見送るのみです。
「また、戻ってくることのないように」
スーダンでは、砂嵐などの天候に左右されたり、なぜだかわからない飛行機の遅延が発生したり、
あるいはイミグレーションで難癖を付けられたりして、飛べないこともあります。
とりあえず、空港の中へ消えていくのを見届けて、一安心して家路につきます。
日本の事務局にも、その旨を連絡して、「明日、日本に到着します」てな、メールを送りました。
しばらくして、岩間さんからの電話です。
どうやら、飛行機の乗れなかったとのことです。
事情は、以下のようです。
まず、空港カウンターで出国ビザが期限切れになっているとの指摘を受けました。
確認すると、確かに期限切れのようです。
よーく見ると、前回帰国したときと同じ、日付で出国ビザの日程が記されています。
これは、明らかにそれを発行したスーダン政府の過ちです。
それを主張しても、なかなか認められませんでしたが、最後は発行番号に違うことに気づき、
それで相手も納得したようです。
この間に、しばらく時間が経過しました。
ようやく、出国ビザが解決して、再び空港カウンターへ向かうと、
その航空会社がダブルブッキングをしていて、もう座席はないとのこと。
夜中の便はあるものの、それでは、日本行きの便に間に合わず、
明日一番にハルツーム市内の航空会社の事務所に行くように指示されたそうです。
ここまでは、相手の航空会社の人は申し訳ない態度だったようです。
そして、岩間さんを迎えに空港へ行くと、がっくりと肩を落とした岩間さんがいました。
岩間さんを励ますため、昼間は私がラーメンライスを、夜はしげちゃんが手巻き寿司を作りました。
そして、芹沢さんから頂いたアイスクリームを、でかい箱ごと抱えて食べていました。
ちなみに、この一日のみで1.7キロ増量したようです。
次の朝、皆で航空会社の事務所へと行きます。
私は、こういう交渉ごとは、自分の眼前に繰り広げられると、必要以上にエキサイトしてしまうので
遠くで見ることに。
どうしようもない事態になっていることは、遠くからも理解できました。
岩間さんが冷静に抗議を続けますが、向こうは「私には落ち度はないのよ!」といった感じで
まったく、話にならないようです。
係りの人を代えて、交渉しても同じ結果です。
結局、出国は明後日になりました。
またしても、何が起こるか分からない恐るべきスリルゾーンのスーダンです。
それにしても、岩間さんの冷静な態度での交渉には、勉強させられました。
「昔は、怒ったことは何度かあったけど、それで事態が好転したことはなかったもんね」
そうか、私か過去何度か、きれたことがあり、岩間さんの言われるように
怒って事態が好転したことはありませんでした。
自分自身のやりきれなさの発散でしかありませんでした。
でも、相手の接客態度は、悪いと言わざるを得ません。
日本では、申し訳ございませんが・・・、というのが言葉の端々にも、そして態度にも表れるのですが
こちらでは、自分を正当化して、それを突き通してきます。
日本では、クレーマーが多いと聞きますが、彼らとこちらでの窓口担当と一度張り合わせてみたいくらいです。
岩間さん、もう少しスーダンでいらしてくださいな。
川原尚行