スーダン2007.06.14
過去のブログより。2006年3月
空手の稽古をしていた。
休憩時間に水を飲もうとカバンをさぐると、携帯電話とお金がない。
盗まれたようだ。
そういえば、さっき荷物置き場に人がいた。
皆が誰かの知り合いだと思っていたようだ。
稽古場には新しい学生や練習生の家族がいつも見学に来ている。
だから全員が何の疑いも持たずに練習をしていた。
スーダンの治安は日本と同じ程度か、それよりも良い。
誰も警戒などしない。
何人かは犯人らしき人の顔を覚えていた。
僕の知らぬ間に彼らは大学駐在の警察に被害を届け出て
黒帯2人は犯人を捕まえに出かけていった。
「あなたは私達の兄弟だから」
そう言って、財布から出したお金を僕に握らした人がいた。
ありがとう、でも大丈夫だよ、バス代分の小銭はあるし。
僕が何を言っても受け取ってくれなかった。
会ったばかりで、何もお互いのことを知らないのに。
誰もが心配してくれる。
ありがとう、としか言えず、
その後の練習中もずっと涙がでそうだった。
落ちていく陽の中で
下段払いに意識を集中させて自分をごまかした。
みんなでお金を集めて来週渡すよ、
とか言ってくれた人もいた。
どうやってこの恩にこたえればよいのか。
一生懸命勉強しよう。
荒井繁