スーフィー
ハサバラ村から、学校の完成式典の準備を行った後、ハルツームへと向かいます。
途中、スーフィーの研究をしている丸ちゃんをピックアップしに、アブハラースという彼の住んでいる村に入ります。
彼らと一緒に食事を下後、丸ちゃんがグッバと呼ばれる偉人のお墓に案内してくれました。
300年も前の偉人です。
グッバの中に棺があるのですが、中は空洞で、砂地が見えます。
この砂の奥深くに、遺体があるそうです。
スーフィーの信者は、遠くからこのお墓を訪れ、この棺の下にある砂を一握り持ち帰るそうです。
ご利益があるとのことです。
棺は、形のみで、布で覆われており、いわゆるカーテンがかけられている状態です。
一見すると棺があるように見えますが、カーテンをめくると、砂が見えます。
私は、その棺の横に跪き、その砂地に手をおきます。
心、静かにして偉人との対話を試みます。
そして、右手で砂を掴み取りました。
これを持ち帰ることをお許しくださいと監視人につげると、この盲目の監視人は
ちょっと待ってと、手探りにある箱のところにいき、その中にあるあらかじめ用意されていた砂をくれました。
たんに、ビニール袋に入っただけの砂でしたが、私にとっては神々しく見えました。
それをハルツームに持ち帰りました。
夜は、丸ちゃんに連れられて、スーフィーダンスに参加しにいきました。
今までは、見るのみだったのですが、スーフィー研究者の丸ちゃんがいるおかげで、
参加できるのです。
観光客のいる一部のダンスと違い、日が暮れてから行われる二部は、観光客はだれもなく
熱心な信者のみでもダンスです。
まず、お墓の中に入り、みなで声を合わせて「アッラー」と叫びます。
これが、体全体にしみこむような感じで、これが私の今からの体験の前段階でした。
そして、この集団のリーダーであるシャイフに引き連れられて、メインの踊る場所に向かっての行進です。
このシャイフ、とても私に気を配ってくれているのが分かります。
でも、全体にももちろん目を向けないといけません。
そして、靴を脱ぎ捨て、ジクル(踊り)の始まりです。
「アッラー」の連呼から、なんと言っているのか分からないまでも
今まで、スーフィーを何十回と見てきているので、大体のフレーズが分かります。
それを大声で張り上げながら、輪の中でジクルを行います。
輪の中には、昇天を目指して、グルグルと回転するものもいます。
そのうちの一人が昇天したのか、倒れこみました。
そして、シャイフが輪の中を駆け巡っていると、私を呼び出しました。
私はシャイフの横につき、シャイフの行うとおりにジクルを行いました。
それから、シャイフは走り出します。
私も懸命に何周も走ります。
私とシャイフの後には、何人もが後に続きます。
輪の中をグルグル、グルグル。
声を出しながら、グルグル、グルグル。
そのうちに、「アッラー」のことばが、
「ヤーパン」に聞こえてきました。
群集の皆が、シャイフに先導されて全員が「ヤーパン」といっています。
ここにいる全員が私を励ますために「日本」と連呼しているのです。
私は嬉しさのあまり、走りながらも涙がこみ上げてきました。
私も声を張り上げます。
「ヤーパン、ヤーパン」
何周走ったのか覚えていません。シャイフは、突然座り込み、また「アッラー」を連呼します。
私も正座し、「アッラー」を連呼します。
そして、ひざ立ちになり、その姿勢のまま輪を一周します。
これが、結構きつかったです。
そして、また走ります。
長いジクルがいつの間にか終了し、お祈りでジクルの終わりを告げます。
私は放心状態にありました。
家に帰って、丸ちゃんに「ヤパーン」って言っていたよね。
と聞くと、それは絶対にないとのことです。
そうです、私は幻聴をずっと聴いていたのです。
丸ちゃんいわく
「川原さん、行ってしまいましたね」
川原尚行