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スーダン2007.06.11

? 僕の結論では「力の限り西へ、西へ」だ。 ?

友人夫婦が引越しをした。その3日後、食事に呼ばれた。
日本では引越しをした際に「おそばに来ました。よろしくお願いします」
という意味で蕎麦を隣人に配ることがあるように、
スーダンでもきっとそういう習慣があるのだろう。
そう思って聞いてみたら
「食事会をしたいだけで、スーダンでは引越しの時に食事を振舞う習慣はないよ」と言われた。
ただしマイホームを持ったときには羊を屠り、みなを歓待するということだ。
友人の家は依然として借家であることに変わりはなく、
場所も今までと同じ地区である。前の家とは歩ける距離だ。
それでも、新しい家で始まる新しい生活は気分転換になるようで、二人とも幸せそうである。
それを見て、引越しっていいよな、と僕は思っていたが、
話してみたら、
嬉しさの一番の理由は
天井がトタンからコンクリートになって室温が少し下がったことだとわかった。
なるほどね。ここならではの現実的な理由があった。
客間でくつろぐ僕たちに、お盆に乗り切らない量の食事が出された。
食後にはフルーツ盛り合わせに加えプリンも出た。
イスラームでは客人をもてなす事に重きを置く。
「食べろ、食べろ、ほらほら、どんどん食べろ。
お前はもっと太らなきゃいけない。俺は毎日12個の卵を食べているぞ」
と動脈硬化の危機に(おそらく)面しているであろう100キロ級の旦那にいわれ続け、
招かれた側の僕はひたすらに胃袋を酷使する。
手元の皿を空けると「食え、食え。わははは」と御代わりがすぐに盛られる。
「もう無理だって。1時間休憩をくれ」と言うと
「私の料理が食べれないって言うの!」と今度はお嫁さんに睨まれる。
とても美味しいのだが、日本人サイズの胃には厳しい。
「日本人はお米が好きだって聞いたから、たくさん炊いたのよ」
そんなことを言われても炊きすぎである。次からはタッパーを持参しようか。
しかし、がんばって食べた。しょっぱかったスープも飲み干した。
僕が胃拡張になったらスーダン人の優しさのせいだ。
この日僕は「エンデュアランス号漂流」という本を読んでいた。
これは約100年前に南極を1年半にも渡って漂流した28人の実話である。
彼らは沈没した船を捨て、氷床とともに海を流れて、
流氷がなくなった後は7メートルにも満たないボートで1400キロ以上も大海を漂流した。
その間、乗組員は濡れた寝袋で眠り、凍傷に苦しんだ。
アザラシを食べ、ペンギンを食べ、犬の餌とビスケットで生き残ろうとした。
本の中には氷点下の世界での飢えが書かれていて、
僕は40度の中にいながら、零下の寒さと空腹を想像していた。
納涼読書。
そんな時だったので、
脳から「飢えに備えなさい」との指令が下され
いつもより食べることができた。
おかげで僕の食欲にはどうにか及第点が与えられたようだ。
全てが天こ盛り。

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オレンジの下にはバナナ、バナナの下にはマンゴー。

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荒井繁