子どもの死亡を減らしていくために ザンビアのヘルスポストから
ぐるぐる巻きにされた新生児と一緒に、村のヘルスポストへと女性が運ばれてきました。今朝、自宅で産んだばかりだそう。新生児は、すでに息絶えていました。理由は分かりません。
運ばれてきた・・・ と言っても、夫が押す自転車の荷台に座って、1時間半かけて揺られてきたのです。出血が続いていないことを確認して、そのまま自宅へと帰っていきました。水子となった新生児も、小さな茶色い鞄に入れられて、ふたたび母親と一緒に揺られています。
統計に表れないケースも
出産後6時間の見守りが、この国のルールとなっています。それでも、こちらで見守ることができるはずですが、7人の子どもたちが待っているので帰らなければならないと・・・ 厳しいです。
ザンビアの新生児死亡率は、公式統計で2.4%(日本は0.08%)となっていますが、実際はもっともっと高いのだろうと思います。今回の新生児も統計に載るのかどうか、定かではありません。妊産婦死亡率は、出生10万人当たり213.0(日本は5.0)と、500人が産まれるたびに1人のお母さんが亡くなっていることになります。
医学的に管理された出産を普及させれば良い・・・ という単純な話ではありません。医師も看護師も不足していて、そもそも村のヘルスポストには看護師すらいません。雨が降れば道はぬかるみ、自転車ですらアクセスは悪くなります。陣痛を抱えながら、女性は何時間も歩かなければなりません。
ザンビア政府は自宅分娩を禁じているが…
ザンビア政府の統計(2014年)によると、出産の42%が自宅で行なわれています。政府は、自宅での分娩を禁じていますが、現実とのすれ違いが拡がっているかもしれません。むしろ、政府が自宅分娩を禁じたことで、自宅分娩を支援する「産婆=伝統的助産」は違法となり、彼らへの支援と教育が手薄になっている可能性もあります。
早々に解決策が見えてくるわけではありませんが・・・ 伝統的助産を切り捨てることなく、ヘルスボランティアとの連携をとること。妊婦検診を普及させて、ハイリスク分娩に早く気付ける体制とすること。その結果を踏まえた、妊婦教育を普及させること。周産期を安全に過ごすことができる場(自宅環境の改善も含む)を増やしていくこと。 夫の押す自転車に揺られ、7人の子どもの待つ家へと帰っていく母親を見送りながら、そんな必要性を漠然と感じておりました。空は果てなく、道のりは遠い・・・
ロシナンテス理事/高山義浩