危険な状態を見極めるために | ザンビアの診療所でエコー研修を実施
5つの診療所へのエコー導入完了
ロシナンテスは2019年から、アフリカのザンビアで母子保健事業を行っています。
今年の事業の重要な柱の一つは、チサンバ郡内の5か所の診療所(チサンバ診療所、モンボシ診療所、カナカンタパ診療所、チペンビ診療所、マロンベ診療所)への小型エコーの導入と診断方法の研修です。
昨年度の事業では、マザーシェルターを建設したムワプラ診療所に同様の小型エコーの導入と診断方法の研修を実施しました。
このムワプラ診療所でのエコー導入により、診療所での出産の増加、健診受診率の上昇など、成果を上げることができました。
またエコーによる診断の評判が大変良く、他の地域からも要望が寄せられるようになりました。実際この5つの診療所も農村部に位置しており、エコー診断を受けるためには、大きな町まで行かねばならず、これまでの妊婦の出産前のエコー診断受診率は数%のみでした。
チサンバ郡の保健局や地域の伝統的リーダーであるチーフからの依頼もあり、関係者と共に協議した上で、今回の事業実施に至りました。
ザンビア人によるザンビア人のための研修
6月から開始し、およそ3カ月で5つの全ての施設での研修が完了しました。
全ての診療所の職員が一度に集まって研修を行うことができればすぐに終わるのですが、それぞれの診療所での仕事があるため、ロシナンテスのスタッフと講師の先生が各地へ出向く形で、現場での研修実施となりました。
また、講師の先生は昨年と同様にザンビアの産婦人科医師の先生を招き、研修が終わってからも何か困ったときに助言を仰げるような関係を築いています。
ザンビアの農村部にある診療所レベルの医療施設では、人材不足、財源不足により、医師は配置されておらず、医師の次点にあたるクリニカルケアオフィサーや看護師、助産師が妊産婦を含む全ての患者さんのケアを行っています。
そのため、今回の研修でも各医療施設のこうしたの役職の職員が研修対象となりました。
正確に胎児や妊婦の危険な状態を見極める
研修は、各診療所でそれぞれ5日間、ムワプラ地域での研修と同様に、胎児の頭の位置や妊婦の胎盤の位置等、「正確に胎児や妊婦の危険な状態を見極める」ということに集中した内容で行われました。この内容に特化する理由としては、小さな診療所では対応できないような出産を事前に見極め、町にある施設が整備された安全な場所での出産を促すことができるからです。
また、性別の診断を行うと、万が一間違えてしまった場合に、地域住民と診療所職員との間の余計なトラブルが起こる可能性があるので、それは避けた方が良いという、講師の先生からの現地ならではの助言もありました。
初めての地域で感じた困難
昨年エコー事業を行ったムワプラ診療所では、エコー事業の実施までの間に、ヘルスボランティアの育成やマザーシェルターの建設等を通してロシナンテスと地域との関係が構築できていました。一方、今回の5つの医療施設ではこのエコー事業が初めての協働で、これまでやり取りのなかった各施設の職員さんたちとコミュニケーションを取りながら、実際のエコー導入に至るという大きな違いがありました。
そのため、うまくコミュニケーションが取れなかったり、お互いに探り合っているような雰囲気があったりと、ぎこちないスタートとなった診療所もありました。しかし、さすがはザンビア人といったところでしょうか。5日間の研修を終える頃には、各診療所の職員とロシナンテスのローカルスタッフはすっかり打ち解けて、笑顔で研修を終えることができました。
研修を行った各診療所では既に職員によるエコー診断が行われています。やはり、地域の妊婦からの評判が良い様子で、何件もの危険な状態をしっかりと見つけることができたという話を聞いています。
ロシナンテスでは引き続き、各診療所でのエコー診断の実施状況をモニタリングし、改善に努めていきます。