特定非営利活動法人ロシナンテス

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スーダン2022.04.04

新型コロナによる移動・集会の制限で困難になる、SDGs3の達成

皆さんは、「健康」とは何か考えたことはありますか?WHO(世界保健機関)では、健康について以下のように定義しています。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”1)

健康とは単に病気や病弱がないことではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態のことを指す。

すべての人の健康を守るために掲げられたのが、SDGs(持続可能な開発目標)3です。 SDGs 3は、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する(すべての人に福祉と健康を)」というテーマのもと、13個のターゲットを定めています。先日ご紹介したSDG1の進捗状況に続いて、今回はSDG3の状況についてのコラムです。

SDGs 3に定められた13のターゲット

3.12030年までに、世界の妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満に削減する。
3.2全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する。
3.32030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。
3.42030年までに、非感染症疾患(NCD)による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。
3.5麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する。
3.62020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.72030年までに、家族計画、情報・教育、およびリプロダクティブ・ヘルスの国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関するヘルスケアをすべての人々が利用できるようにする。
3.8すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.92030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質および土壌の汚染による死亡および病気の件数を大幅に減少させる。
3.aすべての国々において、たばこ規制枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b主に開発途上国に影響を及ぼしている感染性および非感染性疾患のワクチンおよび医薬品の研究開発を支援する。また、ドーハ宣言に従い安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護およびすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を完全に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政、および保健従事者の採用、能力開発・訓練、および定着を大幅に拡大させる。
3.dすべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康リスクの早期警告、リスク緩和およびリスク管理のための能力を強化する。

例えば3.1の妊産婦死亡率。この指標は、SDGsの前身であったMDGsの達成状況の中で進捗に遅れがあったものの一つですが、特にサブサハラアフリカ諸国の状況は深刻です。改善傾向にあるものの、ロシナンテスが活動を行うザンビアの妊産婦死亡率は183/100,000(2019年)で、日本の3.4/100,000に比べて大変高い数字であることがわかります。

達成に向けた進捗は?

これまでの取り組みで、13個のターゲットそれぞれに着実な進歩がみられています。例えば…

妊産婦死亡率の年間平均は2000年から2017年までの間に2.9%減少しました。

・ロシナンテスが活動するスーダンでは、新生児死亡率(生後28日以内に亡くなる新生児の数/1,000人あたり)は36.90人(2000年)から27.20人(2019年)に減少しました。

HIV患者(15-49歳)は、2010年から2018年の間に18%減少しました。スーダンでも、1,000人あたりの新規HIV感染者は0.08人(2019年)と、2030年までに感染者を0にするという目標に向かって着実に歩みを進めています。

しかし、例えば3.3の感染症に関する指標において、世界の新規感染者数は改善傾向にあるものの、世界のマラリア感染者総数のうち93%がアフリカ地域に集中している、というような地域格差は大きな課題です。また、新型コロナウイルスの流行が、取り組みにさらなるブレーキをかけています。

新型コロナの影響で…

・医療機関・食料へのアクセスが減少し、産婦・乳児死亡率の増加が予想されている

・ワクチンの輸入が滞ったり、予防接種の啓発活動が行えなくなったりすることで、はしかやポリオなど他の感染症にかかる人が増える

・公衆衛生面の対応力不足が浮き彫りとなり、次なるパンデミックへの備えが必要になっている

など、新型コロナが多方面に影響を及ぼすことが予想されています。

ロシナンテスはこれまで、巡回診療や診療所建設、地域住民に対する疾病予防の啓発活動などを通して、村落部での保健医療体制の整備に取り組んできました。しかし、どの活動も、現地で直接対面し、集まって行う活動がほとんどでした。インターネットも、場所によっては電話も通じない地域において、移動が制限され、集まることがよくない状況下で活動を続けるには、様々な工夫や変更が必要になります。

例えばパンデミック下での対策支援としては、マスクなどの衛生用品の配布に加え、手洗いやソーシャルディスタンスを含む感染対策について巡回車とスピーカーを用いた啓発活動を行いました。集まらずにできるやり方を模索した結果です。

今後もやり方を考え、新しい形を試しながら、これまで改善された状況が大きく後退しないよう、そしてさらなる改善を達成できるよう、微力ながら草の根でできることに尽力していきたいと思います。

配布されたマスクを着用する子供たち(ザンビア・ムワプラの小学校にて)

今後も皆さまと力を合わせ、スーダンやザンビアの人々の健康増進に貢献していきます。

【参考文献】

1) World Health Organization, “Constitution”

https://www.who.int/about/governance/constitution

2) 3) SDGs media, “2020年世界のSDGs達成度ランキング|目標ごとの成果と課題”

https://sdgs.media/blog/5348/#SDGs1