支え、支えられる。マザーシェルターに関わる人々。
ムワプラ診療所のスタッフたち、それを支えるヘルス・ボランティアのメンバー、そして出産のために訪れる妊婦さん。今回は、マザーシェルターに関わる人々をご紹介します。
ムワプラ診療所の出産を支えるスタッフのザビアさん
完成したばかりのマザーシェルターの前に立っているのは、ムワプラ診療所でヘルスアシスタントとして勤務しているザビア・モーノさんです。2021年の12月にロシナンテスによるエコーの研修を受けました。
ザンビアの伝統的な価値観では、妊婦さんが妊娠していることを認識しても、ある程度胎児が大きくなるまでは母子健診には来ません。しかしムワプラ診療所にエコーを導入してから、妊娠3ヶ月以内に産前健診を受診する妊婦さんの数が明らかに増えました。
また、今までは産前健診に夫が一緒に来ることはほとんどありませんでしたが、最近は付き添いで来て、エコー健診の様子を見てくれるケールも増えました。夫が出産前から赤ちゃんに関心を示してくれるようになったことは、この地域の家族にとって大きな変化だと思います。
ムワプラ診療所は今までより忙しくなってしまいましたが、「今後もエコー健診を継続して実施し、母親たちの役に立ちたいです。」と話してくれました。
村落部に欠かせないボランティアのアグレイさん
マザーシェルターの多目的棟で撮影に応じてくれたのは、15Kmほど離れた地域に住むヘルスボランティアのアグレイさんです。ザンビアの村落部では、彼のようなボランティアが欠かせません。
この地域には、伝統的迷信が根強く残っています。「魔術にかかるので、生まれてすぐの赤ん坊は人前に出してはいけない」などといった話に事欠きません。自宅出産が減らない理由の1つでもあります。2006年以降、アグレイさんは一軒づつ家庭を回り、啓発活動を行ってきました。時には迷信を信じる夫や家族から抵抗されたこともありましたが、粘り強く話をし、医療施設での出産を促してきました。
モットーは、「自信を持つこと」、「自己犠牲」、「ハートフル」だそうです。アグレイさんのような人々によって、ザンビア村落部の医療は守られています。
3人目をマザーシェルターで出産したメリーさん
マザーシェルターの中で笑顔を見せてくれているのは、26歳のメリーさんです。過去3回の出産を別々の場所で経験しました。1人目は自宅、2人目は診療所、3人目はロシナンテスが建設したマザーシェルターでした。
「1人目を産んだ時、誰もサポートしてくれませんでした。2人目を産んだ時は、経験のある職員がいてくれて心強かったです。でも、分娩室は共用で、プライバシーがありませんでした。分娩室が独立していて、出産後に十分に休める部屋が用意されていたマザーシェルターが一番快適でした。4人目はまたマザーシェルターで産みたいです。」と話してくれました。遠距離に住んでいるにも関わらず、彼女のようにマザーシェルターで子どもを産みたいと言う妊婦さんが少しづつ増えています。
一方で、少なからず自宅出産を選ぶ妊婦さんもいます。
想像できますでしょうか。出産予定日が曖昧で、急に産気づいた時に、診療所までの2時間の道のりを徒歩で向かわなければならないのです。自宅出産の危険を知らない場合ももちろんありますが、彼女たちにとっての合理的判断であることも多いのです。危険をおかしたい妊婦さんはいませんので、安心できる場所と正しい情報があれば、施設分娩は増えるはずです。
自宅出産を経験したメリーさんがマザーシェルターを選んだように、マザーシェルターを通じて安心して産める場所を、また、エコー導入を通じて正しい出産予定日や胎児の異常の情報を提供することで、ムワプラ診療所が地域の人々にとって安心して出産できる場所になっていくよう、引き続きサポートしていきます。
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