特定非営利活動法人ロシナンテス

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ザンビア2021.12.25

すでに危険な状態の発見も!エコーの導入研修を実施

2021年12月16日~22日、ロシナンテスの事業地であるムワプラ診療所において、専門家の産婦人科医師による小型エコーの導入と診断方法の研修を行いました。ムワプラ診療所は10月にマザーシェルターの建設を行った医療施設です。

地域の妊婦さんたちからの期待

ムワプラ診療所では、産前健診において、トラウベ聴診器と呼ばれる伝統的な診断器具と触診のみで診察を行ってきました。しかし、トラウベ聴診器だけでは、妊婦さんと赤ちゃんの正確な情報を得ることは難しく、相当な技術と経験が必要でした。

そのため、出産まで危険な状態を把握できないままでいたというケースが発生していました。またそうしたケースを避けるために、正確な判断ができない場合は近くの町の大きな病院へ行ってもらうという方法をとっており、交通費や宿泊費などが発生し大きな負担となっていました。大きな病院へ行ってみたものの、特に難しい出産ではなく、村に戻ってムワプラでの出産を勧められるということもあったようです。

また、ザンビアでは産前のエコー健診が推奨されていますが、エコー検診を受けたい場合も大きな病院へ行く必要がありました。前述のような費用負担と身体的な負担がかかることから、ムワプラ地域ではエコー検診を受けることなく出産日を迎えるという妊婦さんが多く存在しています。 そのため、ムワプラ地域の中でエコーを受けられるようになることは、地域の女性にとっても待ち望んでいたことでした。

正確な診断を目指して―すでに危険な状態の発見も!

今回ムワプラ診療所に導入したのは小型のエコーで、ノートパソコンやタブレットのUSBハブに接続し、専用のアプリケーションをダウンロードするだけで使用できるシンプルなものです。

小型ですが、心音や羊水の量、胎盤の位置、頭や身体の大きさを知ることができます。

今回の研修では、実践的な診断の練習に多くの時間を割き、ムワプラ診療所の職員だけでも、妊婦さんと赤ちゃんの状態を知ることができるようになりました。研修の開始頃は、頭と身体を見つけ、胎盤の位置を見つけるまでは30分程かかっていましたが、最終日には5分~15分程度で全ての診断を終えることができるようになりました。これまで一緒に仕事を行ってきたムワプラ診療所の職員が、一生懸命にエコー診断の技術を身につけようとしている姿がとても印象的でした。

「しっかりと、でも優しくお腹に当ててください。そうしないと何も見えないですよ。」
「ここが胎盤です。この黒い部分が羊水です。まず胎児の位置を確認してください。どこが頭かわかりますか?」
講師の声に導かれながら、診療所の職員が大きく膨らんだお腹にエコー機を押しあて、画面を見ながら胎児の位置を確認します。

「11月10日の出産予定日を過ぎても赤ちゃんが生まれないので心配」。そんな不安を抱いて、研修実施中の診療所にやって来た17歳のプリティさん。お腹や背中に痛みを感じ、余計に不安が増したそうです。エコー診断の結果、予定日が間違っており、新しい予定日は12月31日ということが分かりました。

また別の妊娠9か月の妊婦さんは、赤ちゃんが双子でかつ逆子であることを初めて発見するといった出来事がありました。今後はこうした状況を早期発見できるようになることが期待されます。

他の医療施設にも

ムワプラ診療所は僻地の医療施設のため、医者は配属されておらず、今後も助産師と看護師が診断していくことになります。医者がいなくても、危険な状態を早期に発見できることによって、母子の安全を守ることに繋がります。

日本人ではなく、ザンビア人の医師を専門家として迎える新たな試みでしたが、世の中の状況が目まぐるしく変化していく昨今の状況の中で、安定して事業を展開していくこと、そして継続的にフォローアップしていくことを考えると、とても有効な方法だと感じています。

来年は、今回導入した小型エコーを、ムワプラ診療所のあるチサンバ郡内で、エコー検診を実施できていない他の医療施設にも導入していく予定です。

皆さまのご支援のおかげで、こうした活動を持続させることができています。心より御礼申し上げます。

引き続き、ザンビアの妊産婦を取り巻く環境にご関心をお寄せいただけましたら幸いです。

講師からコメントをいただきました

研修を担当してくださった講師のDr.Imasiku(イマシク先生)よりコメントをいただきました。

今回、僻地の医療施設であるムワプラ診療所の職員に対して、エコー診断技術の研修を行うことができました。診療所の職員が、妊婦の危険な状態を早期に発見し、大きな病院に搬送できる能力を育てるという当初の目標を達成することができたと思います。こうしたプロジェクトは大変すばらしいものです。また、他の医療施設で同様のプロジェクトが展開されれば、それもまたすばらしい成果を上げることにつながると思います。