解任されたハムドク氏が再び首相に?揺れ動くスーダン #スーダン情勢
10/25にスーダンで軍事クーデターが発生しました。クーデターの当日の様子については理事長川原のブログでお伝えしています。
民主化への歩みを止めた軍によるクーデター
スーダンでは2019年、長年の独裁体制を敷いていたバシール政権が崩壊。その後文民と軍の合意に基づいた統治評議会によって民主化に向けた共同統治が行われていました。その合意では、国家元首は2021年11月に軍から文民に移されることになっていました。しかし、今回のクーデターにより、文民である首相のハムドク氏を始め複数の大臣が拘束され、軍が一方的に暫定政権の解散、軍主導の統治評議会の発足を宣言しました。
それを受け民主化勢力は、一方的な措置で受け入れられないと表明し、大規模なデモを繰り返しています。民主化勢力と市民による反軍政デモは断続的に起こっており、数日ごとに「百万人の行進(March of Millions)」を掲げる大規模デモも実施されています。デモでは、クーデターを起こした勢力による武器を用いた制圧が行われ、10/25のクーデターから11/21までに、少なくとも女性や子どもを含む40人が亡くなっています。
国際社会からもクーデターに対して非難の声があがり、世界銀行やアメリカによる支援凍結や、アフリカ連合によるスーダンの参加停止が発表されました。
再びハムドク氏が首相に、しかし民主化勢力は…
クーデターからおよそ1か月後の11/21、軍トップのブルハン氏とハムドク氏は合意文書を交わしました。内容は、拘束している政治家ら全員を解放することと、ハムドク氏を再び首相とし、文民による新たな内閣を発足させ、2023年7月までに総選挙を実施するとされています。国連や欧米諸国はこの合意を歓迎すると発表しています。
しかし、クーデター後、統治評議会の実権は軍主導となっており、今まで市民を牽引し、2年前に首相にハムドク氏を指名した民主化勢力は、軍との合意を受け入れられないと表明し、さらなる抗議行動を呼びかけています。また、クーデター前に大臣を務めていた閣僚12名が軍との合意に反対し、辞任を申し出ています。
これまでの経緯
10/25 軍のトップで統治評議会(前暫定政権)議長だったブルハン氏主導によるクーデター、本来発出権限のない軍が全国に非常事態を宣言、道路封鎖、携帯の通話やインターネット(モバイルデータ通信)が遮断、市民による大規模な反軍政デモ、空港封鎖
10/26 携帯の通話が復旧(インターネット遮断は継続)
10/28頃 空港封鎖解除
10/30 市民による大規模な反軍政デモ、携帯の通話が一時遮断(夜に復旧)
11/4 クーデターで拘束していた前暫定政権の情報相など閣僚4人を解放することを決定したとの報道(11/24現在解放されたという報道はなし)
11/7 市民による大規模な反軍政デモ
11/9 スーダン消費者保護協会からの申し立てを受け、裁判所が携帯通信会社にインターネット(モバイルデータ通信)の即時復旧を命じたとの報道
11/10 市民による大規模な反軍政デモ
11/11 先月クーデターを起こしたスーダン軍トップのブルハン氏が新たに暫定統治評議会を発足させ、自ら議長として宣誓 /インターネット遮断は国家安全保障上の措置であり、裁判所の命令を含む他の判断を上書きするという公文書を政府組織が発出
11/13 市民による大規模な反軍政デモ
11/16 アメリカの国務次官補がハルツームで軍・民双方と会談
11/17 市民による大規模な反軍政デモ、携帯の通話が遮断(インターネット(モバイルデータ通信)の遮断も継続中)
11/18 携帯の通話、インターネット(モバイルデータ通信)が復旧、SNS(FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーキングサービス)が遮断
11/21 自宅軟禁を解かれたハムドク氏が軍との合意書に署名、ハムドク氏が首相に復職、市民による大規模な反軍政デモ
11/22 クーデター前の大臣12名が辞任を表明
11/24 一部の通信会社でSNS遮断が復旧(一部は遮断継続)
11/25 再び市民による大規模な反軍政デモが呼びかけられている
(2021/11/24現在)