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スーダン2009.04.02

日本人学生スーダン研修活動 感想文1

報告:北海道大学医学部医学科3年 木場宣宏
見学動機
初めの純粋な動機としてはNGOの活動がみたかった。なぜなら、多くの巨大な機関が途上国などで様々な援助活動を行う中で、どの援助活動を見てもNGOの重要性が叫ばれているからだ。そこには草の根的で、柔軟な対応ができるなどの利点があげられているが、これをこの目でみて、その長所を実感し、もし機会があればNGOという組織として必ず内包してしまうであろう短所についても考察してみたかった
また、スーダンという国自体にも興味があった。まさに国際社会において渦中の国である。一朝一夕でわかるものではないが、少しでも、その歴史を調べ、文化を感じ、そこに住む人々の生の声を聞き、生活を見て、この国の国際社会での立場が如何にして作られてしまったかを自分なりに考えてみたかった。そして、自分なりにスーダンという国の改善点を明確にし、国際社会は介入すべきか、もし介入すべきならどういったアプローチが適切かを考察してみたかった。その中で、医療がどのように行われ、個人としてどのようなアプローチができるかも考えてみたかった。
以上の点を踏まえ、今回の見学の内容を特に興味があった二つの項目について概して感想を述べたいと思う。(帰国後、この感想を踏まえた報告書を提出することを計画している)
ロシナンテスを通してみたNGO
良くも悪くも、川原さんのリーダーシップに依存していることが印象に残った。この川原さんの能力を最大限に生かせるように周りの方々がサポートしているという感じがした。この体制は川原さんの意向を迅速に組織の活動に反映でき、スーダンという比較的不安定な状況に柔軟に対応できることが、ロシナンテスがスーダンで継続的に活動できている要因のひとつでないかと考えられる。対して、この体制は指導者の道徳心に基づく適切な判断が求められるが、この活動が多くの人に支持されていることが、それが行われているこの上ない証拠であろう。
また、ロシナンテスにも一般的なNGOにも、現実的に直面する問題として、その不安定な活動資金が目立って感じられた。資金源の多くを寄付などに依存しているため、団体の宣伝力が大きな鍵となるが、現実的にそれは川原さんの国内での活動が基になっている。安定性を高めるために一般の人への周知活動を強化し、一つの資金源に依存しない等の努力をおこなっているようだが、川原さんの状態如何で予算が大きく変動する状況は変わらないであろう。
この一般的なNGOが抱えるこの慢性的な問題を解決する手段の一つとして、やはり日本政府の介入があげられるであろう。そのためには、NGOの活動の評価、高度な活動の為の援助活動におけるNGOの位置づけなどの高度な問題が多く存在するが、より良い援助のために是非とも取り組むべきだと思った。
スーダンにおける医療システム
スーダンという国の医療は多くの問題を抱えていることを感じた。おそらくこの国の医療には大きく分けて二つの問題が存在するであろう。それは個々の病院のマンパワー、資金力の絶対的不足と地域格差である。
一つめは、スーダンの医師の海外流出、一部病院の設備不足、仮に設備が整った病院であってもそれを使いこなし、維持していく事ができないという状況から感じられた。医学生の人数からみて医師の量でなく分配のシステムに問題があるのは明らかである。また、現代の医療現場においては医師だけでなく、様々な専門職の参加が必要不可欠であるが、そのような人材の不足も感じられた。
二つめは、イブンシーナ病院、カダーレフ州のエマージェンシー病院、ハサバラ村の診療所というレベルの違う病院の見学を通して強く感じた。この格差は設備だけでなく、医療への支払いにも見られる。つまり、地方で得られる程度の低い医療サービスが都市部の程度の高い医療サービスより高くつくという事態が起こりえるのである。平等という曖昧な基準を国民がどこに設定するかにもよるが、生活が最低レベルの人にも医療の利用を可能にし、ある程度の処置を保証する再分配のシステムとしてスーダンの医療システムは機能していないように感じられた。そもそも国民の医療の平等化への問題意識の醸成が不明だし、仮に表面化しても現在の行政機関ではそれを反映するには程遠い状態である。
これらの問題解決には様々なアプローチが考えられるが、鍵となるのは中央から地方への権限委譲であると考えられる。州政府の保健省の権限は無く、中央に少ない資金が集まるのは自明であり、これが病院設備、教育設備の格差を生み、それが医師の都会志向に拍車をかけていると考えられる。また、医療の利用に関して最低レベルの国民の生活状況を考えれば、医療保険に関する政府の介入は必要不可欠であり、スーダンという広大な国土、多様な文化、治安状況を考えれば、州ごとの医療政策の策定を行うべきである。
謝辞
NGOの活動を短い期間にできる限り見せていただいたという感じがした。また、スーダンの医療の中枢に大きく踏み込んで見学させていただいてとても勉強になった。こんな短い期間でNGO、スーダンの全てを知ったとは到底思えないが、日本や世界の医療と援助のあり方を考えるうえで大きな示唆となったことは間違いない。このような本当に貴重な機会を与えてくれた、ロシナンテスのスタッフの皆さんや、スーダンの人々には心から感謝したい。