スーダンで軍部によるクーデタ―発生 #スーダン情勢
2021年10月25日早朝、スーダンでクーデターがありましたが、我々スタッフは皆無事です。ご心配の声をお寄せいただきました皆さま、ありがとうございます。
前日のフィールドビジット
前日24日は水事業を行う地域の視察を行う予定で事務所を出ました。青ナイル川に架かる橋が全て通行止めとの報告がありましたが、事務所の近くの橋のみは開通していて無事に現地まで行くことができました。帰りも橋が閉鎖しているとの情報がありましたが、難なく事務所に戻ってくることができました。
先週の木曜日に民衆が呼びかける形で大規模なデモが行われました。これは民主化を促すためのデモであり、軍部との衝突が懸念されましたが平和裡に終わって安堵していましたが、不穏な空気を感じながらのフィールドビジットでした。
クーデター発生の朝
フィールドから帰ってきて、デスクワークをして寝たのが深夜近くでしたが、早朝の携帯電話の呼び出し音で飛びおきました。電話は日本にいる親友のアブディン(スーダン出身)からでした。「スーダンでクーデターが起きたようだから、とにかく気をつけて」、「ありがとう」という短いやり取りでしたが、パッと目が覚めました。いそぎ、家の中の水を貯められる容器すべてに水を満たし、懐中電灯をドアの前に棚に置きました。緊急時に備えるためです。
この間にインターネットで情報を得ようとしますが、全く繋がりません。アブディンからの電話を最後にネットが切れたかのようでした。朝の5時過ぎからネット、それに電話も全く通じませんでした。急ぎ、1キロも離れていない事務所に行きました。朝の6時過ぎで、その時はまだ街は静まり返っていました。
事務所では幸運なことにインターネットがつながりました。日本人スタッフの無事を確認でき、日本の事務所に連絡を取りました。しかし、ローカルスタッフとの連絡は全く取れません。安全であることを祈るのみです。
やがて、事務所の階上に住むローカルスタッフのラビアが事務所に来てくれて、未明にクーデターがあったこと、それに猛反発する国民がハルツーム市内でタイヤなどを燃やして、抗議の意思を表しているとのことで、窓の外を見ただけでも黒煙が至るところで上がっているのがわかりました。とにかくネットと電話が繋がらないので困惑しているとのことでした。
最悪の事態を考えてしばらくの間、籠城できる準備を整えます。事務所はインバーターを設置したばかりで停電にも対応できますし、水も十分に保存してあります。しかし私の家の飲料水が不十分だったのと、食料ももう少し足しておこうと考えて、近くの店を見ると幸いにも開いていて、水と食料を買い、籠城できる体制にしました。店の様子はいたって普通でしたが、人々は軍の悪口を言い合っていました。
軍によるクーデターの背景
2019年に国民が一体となって政府への抗議デモ、軍本部前での座り込みを行い、最後は軍が時のバシール大統領を退陣させました。それから、軍と文民が半分半分となる暫定政府が樹立されました。暫定期間の前半は軍人がトップとなり、後半は文民がトップを務め、暫定政権のあとに2023年暮れ頃には選挙をして正式な政府を樹立となる予定でした。
軍がトップを明け渡すのがこの11月であり、軍が主導権を文民にわたすのを拒む意図もあり今回の暴挙に出たものと思われます。
本日午後に出された軍部の声明では、「現在の暫定政権を解散する」「民政移管を行うための準備作業を継続する」と主張する一方、拘束された暫定政権首相のハムドックは、国民に「街頭に繰り出して平和を主張してほしい」と訴えています。2019年の時は、国民が主体となってのクーデターでしたが、今回は軍が主体となってのクーデターです。住民の怒りは想像を超えるものがあります。しかし、前回のデモと同じことを繰り返そうとしたら軍部は正面から発砲することも考えられます。そのような光景にならないようにと願うばかりです。
今後、状況がどのようになるのか不明ですが、スタッフの安全を確保し、スーダンの平和を祈り続けます。