入職のご挨拶【池田裕美】
こんにちは。2021年2月にロシナンテスに入職しました、池田裕美です。国際文化交流の仕事でのマレーシア駐在、オーストラリアの大学院を経て、3月下旬からスーダンに駐在しています。みなさまのご支援をより良いかたちで現地に届けられるよう、また日本の方々にスーダンについてより良く知っていただけるよう、努めていきたいと思っています。
私が仕事として国際協力に携わるのは今回が初めてですが、その根っこには中学生のころに芽生えた異文化への興味があります。大学生のころ、「いろんな国の日常生活が見てみたい」という思いで、アジア、東ヨーロッパ、中東を訪れ、日本とは異なる文化や価値観に触れる楽しみを知った反面、圧倒的な不平等や理不尽な現状も目の当たりにしました。2ヶ月ほど滞在したネパールでは、まだ学生の自分がアルバイト代で簡単に旅ができる一方で、仕事を掛け持ちしてたくさんの家族を養っている友人には私ほどの移動の自由がないことを知りました。「私が移動の自由を享受し、色んなことを見聞きする機会を得られているのは、私がその友人より賢いからではなく、生まれた環境が違っただけ。人の価値は生まれた国の豊かさで違うわけではない」と感じました。国内外でのさまざまなボランティア活動を通して、自分が与えられてきた特権に気づくことができたことが学部時代の最大の学びであり、その後の人生の原動力にもなっているように思います。
国際文化交流は対等な立場での交流を促進できるやりがいのある仕事でしたが、より困難を抱える人に携わりたいと考え、オーストラリアの大学院で、特に移民や難民など多文化を背景とする人へのソーシャルワークを学びました。マイノリティとの関わりや、2年間の滞在中に発生したBlack Lives Matter運動やCOVID-19感染症拡大など世の中を揺るがす出来事を通して、支援が必要な人たちが支援の代わりに罰を受けるような社会システムが存在することや、社会的危機の際には最も脆弱な立場にある人たちが最も深刻な煽りを受けるということを学び、それは日本やオーストラリアも含む多くの社会に共通して起こっているということにも気づきました。最も脆弱な人々の声を拾い、社会の歪みによって苦しみが生まれる状況を是正していくことは、ソーシャルワークと国際協力に共通する使命だと思っています。
大学院卒業を控え、これまで学んだことを途上国のフィールドで実践していきたいと考えていたときにロシナンテスのことを知り、「地域の人たちだけで医療を継続できる仕組みを作る」というビジョンに、これまで自分が抱いてきた興味関心や問題意識と共通するものがあるように感じました。ソーシャルワークを通して、支援する側のバイアスや潜在的な権力について意識的になることや、裨益者の人たちと共に社会を創り上げていくという視点の大切さを学んだことで、お互いの文化や価値観を尊重しながら信頼関係を築いていけるような組織で働きたいと思っていましたし、また「支援活動の最大の目標は自分たちが必要とされなくなること」と考えていた私にとって、地域の強みをいかしながら長く根付いていくようなシステム作りをすることは、とてもやりがいがあるように感じました。
スーダンは、経済状況が悪化の一途をたどり苦しい状況にありますが、一方で豊かな歴史や伝統文化を持ち、人の繋がりが社会のセーフティネットになっていたり、民主化を目指す活発な動きがあったりなど、日本が見習うべき点もあるように思います。スーダンの人たちから学びを得ながら、一緒に社会を良くしていくための一助となれればと思っていますので、よろしくお願いいたします。