皆様方のご支援のおかげがありロシナンテスは創立から15年を迎えることができました。心から御礼を申し上げます。

ロシナンテス設立前夜

内戦下にあるスーダンの人たちの命を救うために医療支援活動を始めようと決意し、外務省を辞したのが2005年1月でした。地元の北九州に戻り高校のラグビー部後輩の海原君に相談をし、放浪の旅でアフリカから帰国した霜田君（海原君と同期）に「もう一度俺と一緒にアフリカに行ってくれんか？」とお願いしたところ「はい」と短く答えてくれたのは桜の花咲く頃でした。

日本を出発する前には、仲間が集い壮行会をしてくれました。私が決意表明のために書いた言葉は「初志貫徹」。

今でもスーダンの人々のために、アフリカの人々の命を守るために、という気持ちは何ら変わっていません。なお、霜田君が書いた言葉は「見る前に翔べ」でした。霜田君の言葉の通り、我々は準備もそこそこにスーダンへ旅立ちました。

スーダンで医療支援活動に専念し、日本での法人設立は海原君に任せきりでした。海原君が多くの方々に声をかけそして協力してもらい、2006年にNPO法人ロシナンテスが設立されました。

ロシナンテスという団体名は、私の尊敬する写真家である鈴木孔仁さんとの会話から生まれました。

「おれたちってちっぽけな存在でしかないよな、まるでロシナンテみたいだな。でも多くの仲間を集め、ロシナンテがロシナンテスになったら大きな力になるよな！」

ロシナンテはドン・キホーテが騎乗するロバのような貧弱な馬の名前ですが、こんな会話からロシナンテスが誕生しました。

医療支援活動をとにかく早く行いたいと気持ちが先走り、スーダンのルールに則らないこともありましたが、スーダン人のスタッフに支えられ、医療支援活動をしている地域の人たちに寝るところや食べ物を提供してもらい、さらに地方の政府の協力があり、支援活動を継続することができました。全ての方々に感謝です。

スーダンでは国際支援団体を管理監督する部署があり、厳しく指導されるたびに憎悪すら抱いた時期もありましたが、今では我々が組織として成長するための指導であったと考えられ、ときのスーダン政府にすら感謝の気持ちを持っています。

援助から協働へ

最初は私が一人の医師として、医療施設のない地域を巡回していっていましたが、スーダンの保健省のスタッフと一緒に巡回診療を行うようになり、最後は彼らだけで運営できるようにして次の支援地へと活動の場を移してきました。

スーダンの電気がない、水道施設がないような地域では、医療のみでは命を救うことには限りがあることを感じました。きれいで安全な水の提供を行わないことには救える命も救えません。また、地域の人たちの方から医療に携わる人たちを育てることの重要性も感じてきました。それからは医療支援をする傍ら、水の事業や人材育成にも力を注いできています。

スーダンでは経済の悪化が人々の生活を苦しめ、それが原因となって国民のデモが広く行われ2019年に当時の政権が倒れました。治安の悪化があり、我々日本人スタッフの緊急避難を余儀なくされました。支援活動を中断せざるえない状況となり、我々のミッション、ビジョンを目指していく為に、スーダンと同じような問題を抱えたアフリカの国であるザンビアでの事業を2019年から開始しました。

ロシナンテスのミッション（使命・役割）は、「病院が無いなどの理由で、必要な保健医療が受けられない地域に、医療が届く仕組みを整備することで、一人でも多くの命を救う。そして、誰もが健やかに生きることができる環境をつくる」です。

ビジョン（目指す将来像）は、「支援した地域の人たちが、「医療」を自分たちのものとし、地域の人たちだけで医療を継続できる仕組みが根付いている世界」です。

スーダン、ザンビアそしてアフリカの多くの人の命を救うために、仕組みをつくり、それが根付く世界を夢見て、今後はさらに深く考え活動をしなければなりません。

「初志貫徹」　

志を立てたからには、それに向かって突き進むのみです。15年の間にその進み方も変わってきています。当初はがむしゃらに突っ走るのみでしたが、年齢を重ねるごとに昔のように走り回るばかりではなく、時には立ち止まって周囲を見渡し、一歩一歩確実にあゆむことも必要だと思うようになってきました。そして、アフリカの地域住民の方々、日本で応援してくださっている方々、そしてスタッフと一緒になってチームロシナンテスを作り、ビジョンに向かって行動していきたいと思います。

ロシナンテスのバリュー（活動理念）は以下の３つです。

目の前で困っている人を助ける。

家族の絆と地域の和を大切にする。

一人はみんなの為に、みんなは一人の為に！

この１５年間、本当に多くの方々に支えられてロシナンテスは歩んでこられました。これからも、これらの理念のもとに支援活動を継続させて参ります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございます！