マザーシェルター建設を再開、小型エコーの導入も
ロシナンテスがアフリカ・ザンビアで着手している事業のひとつ、マザーシェルターの建設について、進捗のご報告です。
安心して出産できる環境を
マザーシェルターとは、出産前後の妊産婦が待機し、安全に出産するための施設です。
事業地であるムワプラ地域には簡易的な診療所(ヘルスポスト)があります。この診療所ではお産を取り扱っていますが、入院できる施設はありません。そのため、妊婦さんたちは、出産予定日に診療所に向かうしかありません。しかし、診療所が自宅から遠いことや、陣痛が始まってから移動するのが難しいことから、自宅出産を選ばざるをえない家族が多くいます。
また、ザンビアでも日本と同様、産後に検診が必要となりますが、待機できる施設がないため、出産直後に自宅に帰らざるを得ず、産後検診を受診していないお母さんたちが多くいます。
このマザーシェルターには、妊産婦のための部屋だけではなく、付き添いで来ている家族が宿泊できる部屋や、診療所の職員が当直できる部屋、シャワー室やキッチンも含まれています。こうした村落部に暮らす妊産婦さんたちに、安心して出産できる環境を提供できるようになることが切望されています。
地域住民とともに
このマザーシェルターの建設に際しては、早い段階から住民による建設委員会を設立しました。そして、地域住民から建設資材となる砂やレンガ、労働力を提供してもらい、地域住民参加型のプロジェクトを目指しています。完成後には、住民自らの手で建設したという自覚を持って、大切に使用してもらうことをねらいとしているためです。
現在は、建設図面が行政に承認され、建設を担当する業者との正式な契約に向けて調整を重ねている段階です。間もなく建設予定地の整地が始まり、順調に進めば10月には建設を完了し、マザーシェルターとして使用開始できる予定になっています。予定日を迎える前に医療施設に滞在することが、妊婦の安心と安全に繋がることを願っています。
小型エコーの導入
同時に、事業地であるムワプラ診療所への小型エコーの導入も進めています。
ムワプラ診療所では、「トラウベ聴診器」と呼ばれる伝統的な診療器具を使用して、妊婦の検診を行っています。これはお腹に筒状の器具をあてて、耳で胎児の心音を確認するものです。しかしながら、この器具での診察には精度的に難しさがあり、診療所の職員はリスクの高いケースの見落としを回避するために、上位医療機関での再診察や出産を勧めることが多くあります。
結果的に、診療所で取り扱うことができる簡単な出産であっても上位の医療機関に送ることで、他の医療機関を圧迫させることになっています。また、遠くの病院に行くことで、妊婦にも交通費や宿泊等の経済的な負担が発生しています。
この小型エコーを導入することで、胎児の定期的検査、出産に関するリスクの有無を適切に見極められるようになり、安全な出産へとつながります。また、妊産婦の経済的な負担や、診療所職員の負担も減少することにつながるものと考えています。
小型エコーの導入に際しては、寄贈および導入するだけではなく、当該エコーの使用経験のある日本人の産婦人科医師によって使用方法の研修を行い、技術移転を目指します。また、使用方法に関するテキストも使用者の意見を反映して用意することで、今後、診療所職員が交代したり、新たな職員が配置されたりしたときにも継続してエコーの使用ができるように努めていきます。
新型コロナの影響でおよそ1年間事業が滞っていたため、事業地の村の人々も事業の進捗を気にしていた様子です。今年度は事業地の人々の期待に応えるべく、精一杯ザンビアでの事業に取り組んでいきたいと考えています。世界的な感染症流行中の事業展開は、様々な壁にぶつかりながらの活動になりますが、感染対策を講じながら最善を尽くしていきたいと思います。