特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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スーダン2009.02.26

ムスタファの一周忌

昨年、2月29日に交通事故でロシナンテス・メンバーであったムスタファが急逝しました。
あれから、もう一年が過ぎ去りました。
今日、ムスタファの実家にお参りに行ってきました。
お参りといっても、線香をあげるわけでもなく、実家に行き
ムスタファの話をして、ムスタファの家族と一緒に食事をしながら
故人を偲んできました。
ムスタファは本当に愛すべき男でした。
あんなに人にやさしい人もなかなかいません。
誠実そのものです。
ガダーレフの家に車で送った際には、「寄っていってください」
というのを、忙しさのため何度か断ったことがあり、そのたびに悲しそうな顔をしていました。
あるとき、ムスタファの家でゆっくりとすることができた時は
本当にうれしそうな顔をしていました。
そして、私が「今日は寄って行くよ」と行ったら、彼は走ってパンを買いに行きました。
そんなことを思い出していました。
その食事の途中に、ムスタファのお兄さんの携帯が鳴りました。
軽快で少し滑稽さのあるそのリズムは、ムスタファの携帯の着信音と同じものでした。
そのリズムを、すっかり忘れてしまっていましたが、一瞬にして
「あっ!ムスタファだ!」
と食事の席に、まるでムスタファが参加しているような錯覚を感じました。
家族の人が大事にしているムスタファの写真を見せてもらいました。
私が講演で使っている写真ですが、本当に綺麗に保管しています。
ロシナンテスのカレンダーにも出てくるかわいいズルハちゃんが見せてくれました。
1年前は、ムスタファの話をすると必ず涙を見せていた彼女も
今日は、涙を見せずに写真を見せてくれました。
内藤順司さんの素晴らしい写真が、ムスタファの魂をここに永遠に残している
気がしました。
ムスタファの実家の裏にある小高い山に登りました。
綺麗な夕日が見えます。
ムスタファは私に挨拶もせずに、この世を去っていきました。
交通事故の知らせをもらったとき、車でハルツームに戻っていました。
そして、急遽引き返して病院に行きましたが、そこにはムスタファの姿はなく
実家のある村に埋められていました。
私に笑顔だけを残していったムスタファ。
そして、今日の夕日は、最後に地平線に沈む前に雲に隠れて見えませんでした。
まるで、ムスタファが最後に私に挨拶をせずに行ったように、
今日の夕日も最後の姿を見せずに沈んでいきました。
ムスタファの魂は、私の心に永遠に残り
そして、太陽はまた明日登ります。
川原尚行