コロナ禍の医療格差ースーダン・ザンビアの新型コロナ事情
はじめまして!インターンの三国と申します。
世間では、そろそろ入学式、入社式が終わり、多くの人が新生活をスタートした頃合いですね。
本日、4月7日は、「世界保健デー」です。WHO憲章が初めて設定されたことにちなみ、1950年に定められました。毎年WHOがテーマを発表し、世界各国で健康のためのイベントが数多く開催されます。(*1)
今年のテーマは、『医療格差』。WHOのテドロス事務局長は、「世界保健デーまでに、パンデミックと多々ある国際的な健康課題の根底にある不平等の両方を乗り越えるための希望の象徴として、すべての国において新型コロナワクチンが投与されるようにしたい」と述べました。(*2)(*3)
ロシナンテスの活動地、アフリカ・スーダンではすでにワクチン投与が開始され、ザンビアでも、政府がワクチンを承認しました。しかしながら、依然として先進国に比べて格差があるのは事実です。以前のブログでも何度か触れてきましたが、スーダン、ザンビアの医療事情を振り返りつつ、新型コロナの状況についてお伝えしたいと思います!
スーダンの新型コロナ事情
スーダンで初めて感染が確認されたのは、2020年3月12日でした。その後、政府は学校の閉鎖や宗教施設での礼拝の時間短縮、夜間外出禁止令などの措置を講じました。また、2020年3月16日には緊急事態宣言を発令し、国境を閉鎖、4月18日には首都ハルツームにてロックダウン(外出禁止令)がなされました。保健省は、有志の市民などの協力の元、SNSを通して動画や画像による啓発活動を行ってきました。(*4)
このように対策を列挙すると、日本と似ていると感じます。しかしながら、日本と違うのは、全ての人がテレビやスマートフォンで情報収集できるわけではないところです。特に地方では、新型コロナウイルスそのものや感染症対策などの基本的な情報へのアクセスが難しい人が多く存在します。また、現在、スーダンではインフレが続いており、経済状況は日に日に悪化しています。そのため、正しい感染予防の知識が持っていても、生活苦によりマスクや石鹸などが買えないこともあります。(*5)
WHOの統計によると、スーダンの今までの感染者数は31,407名、そのうち死者は、2,028名となっています(2021年3月28日現在)(*6)。他国に比べ、一見少ないようにも見えますが、検査を受けられる人自体が限られており、正確な数がとらえられていないのが事実です。駐在員の話によると、検査を受けたり、病院へ入院したりできるのは都市の一部の層に限られ、プライベートな病院はたびたび満床に近づいています。村落部では、そもそも近くに医療施設がなく、また生活苦により病院に行けない人も多く、感染しているかどうか、知るすべがありません。また、貧困層にとっては、死因となりうることは新型コロナウイルス以外にもたくさんあり、そこまで新型コロナウイルスを気にしていないということもあるそうです。
そんなスーダンですが、3月頭にはワクチンの接種が始まりました。ワクチンは、複数国でワクチンを共同購入することで、途上国へ公平なワクチン配布を目指す国際的な取り組み、COVAX(コバックス, COVID-19 Vaccine Global Access)(*7)によりスーダンに配布されます。現段階で配布されたワクチンは、アストラゼネカ製で、その数は、人口の20%程度です。政府は、高齢者と最前線で働く医療従事者へ優先的にワクチン投与を開始しました。メディアによると、現地では防護服など医療従事者が自身を守るための装備が足りておらず、これまでに多くの医療従事者が新型コロナに感染して亡くなりました。現在、スーダンでは感染者が増加傾向にあり、第3波がくると噂されています。現地の人々は、今回のワクチン投与が、医療従事者を励まし、新型コロナに打ち勝つための大きな一歩になることを期待しています。スーダンがCOVAXより第1弾で受け取ったワクチンは、82万回分。最終的には340万回分を受け取る予定となっています。(*8)
ザンビアのコロナ事情
ザンビアでの最初の感染者は、2020年3月18日、フランスから帰国した夫婦でした。続く22日にはパキスタンからの帰国者の感染が確認され、25日にザンビア国内での市中感染が判明しました。政府は速やかに外国からの入国をルサカ国際空港に限定し、渡航者への検疫を課しました。また、レストランの営業形態の制限や、バーや映画館など特定の商業施設の閉鎖、公共の集会の人数制限などの対策措置を講じました。また、保健省が、ウェブサイト(*9)に感染症対策の基本情報をまとめたポスターを掲載したり、Facebookにて毎日最新の感染状況を知らせたりなど、情報の発信を行ってきました。(*10)
3,4月に現地にいた駐在員のブログ(*10)でご報告した通り、ルサカでは、スーパーマーケットの入り口で消毒したり、列に並ぶ際のソーシャルディスタンシングが行われたりと日本と同じような対策が取られていました。また、以前はマスクを着用した人を見かけることはほぼありませんでしたが、大統領が公共の場でのマスクの着用義務を表明したことにより、町中の人がマスクをするようになりました。
しかしながら、先のスーダンの例と同じく、ザンビアでも都市部と村落部では、情報、医療などの分野において格差があります。例えば、ザンビアでは、3月20日以来休校だった学校が9月末に再開しましたが、ロシナンテスの活動地、中央州チサンバ群ムワプラ地域では、マスクがないために授業に出られないという子どもたちが多くいました。政府からのマスクの配布は不十分であり、自分で買うのは経済的負担が大きすぎたのです。ロシナンテスは、5つの学校において、マスクの配布を行いました。(*11)
ザンビアのこれまでの感染者数は、87,727名、うち死者1,198名(2021年3月28日現在)(*12)。1、2月にピークを迎え、最近ではピークに比べ減少傾向にあります。しかしながら、スーダンと同じく、これらの統計がすべての感染をカバーできているわけではないため、実際はもっと多い数字になると推定されます。
ザンビアでは、現段階(2021年3月28日)ではワクチン接種は始まっていません。しかし、3月25日に内閣が、18歳以上のハイリスクな人を対象とするコロナウイルスワクチンプログラムを承認しました。保健大臣の発表によると、300万人分を超えるワクチンがCOVAXによって提供される予定であり、医療従事者、および国境をまたぐ貿易の関係者へ優先的に投与されます。ワクチンプログラムにより、感染の収束のみならず、新型コロナによる経済悪化が緩和されることが期待されています。一方で、現地では、ワクチンに対して不信感を抱く人もおり、ザンビア政府は、メディアや各地のリーダーなどを通して国民にワクチンの重要性を呼びかけています。(*13)
ブログを書いて
今回、スーダンやザンビアのコロナ事情を調べる中で、統計などの表に出てくる情報から受ける印象と駐在員の話やブログなどから受ける印象がかなり違うことに気がつきました。感染者の人口に対する割合や一日の感染者数が日本などの他の国よりも少なかったとしても、そのことは、現地が良い状況にあるという指標ではなく、情報を多角的に分析する必要があります。また、日本ではほとんどの人がテレビや新聞、インターネットなど何らかの情報収集手段を持っていますが、スーダンやザンビアでは基本的な情報すら入手が困難な人もいると知り、情報格差が医療格差にもつながると学びました。
Reference
*1 世界保健デーとそのテーマ|日本WHO協会
https://japan-who.or.jp/about/who-what/world-health-day/
*2 WHO最新ニュース『2021年の世界保健デーのテーマは『健康格差』』|日本WHO協会
https://japan-who.or.jp/news-releases/2101-15/
*3 WHO Director-General’s opening remarks at 148th session of the Executive Board|WHO
https://www.who.int/director-general/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-148th-session-of-the-executive-board
*4 スーダンにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況|認定NPO法人ロシナンテス
https://www.rocinantes.org/blog/covid-19/3771/
*5 オンムサマーマ村での新型コロナ対策支援|認定NPO法人ロシナンテス
https://www.rocinantes.org/blog/covid-19/3856/
*6 WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard -Sudan|WHO
https://covid19.who.int/region/emro/country/sd
*7 COVAXファシリティ|日本ユニセフ協会
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/covax/
*8 Sudan Launches COVID Vaccination Campaign|Voice of America
https://www.voanews.com/covid-19-pandemic/sudan-launches-covid-vaccination-campaign
*9 Ministry of Health|Zambia
https://www.moh.gov.zm/
*10 ザンビアにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況|認定NPO法人ロシナンテス
https://www.rocinantes.org/blog/covid-19/3776/
*11 ないと学校に通えない!新型コロナ対策でマスクを配布|認定NPO法人ロシナンテス
https://www.rocinantes.org/blog/covid-19/3930/
*12 WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard -Zambia|WHO
https://covid19.who.int/region/afro/country/zm
*13 Zambian Cabinet Approves COVID-19 Vaccine|United Nations Zambia
https://zambia.un.org/en/123259-zambian-cabinet-approves-covid-19-vaccine