特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

ロシナンテスからの活動情報をご案内します。

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日本2021.04.08

「東北の今を聴く」を開催して

ロシナンテスは、2011年の震災発生翌日から2016年までの5年間、主に宮城県名取市、岩沼市、亘理町で、巡回診療やがれき撤去、寺子屋や健康農業と題したコミュニティ活動などを行いました。

2021年3月10日、その活動を支えて下さった3人のゲストをお招きし、活動当時の想いや現在までの復興の様子などをお話しいただくオンラインイベントを開きました。ロシナンテスとともに活動してくださった皆さんが、この10年間どのように復興に向き合い続けてきたのか。たくさんの貴重な経験や視点が詰まったお話をお伺いできました。そのうちのいくつかをご紹介したいと思います。

 

ロシナンテスの活動

地震発生後、理事長の川原は救急車を借り東京から東北へ向かいました。たまたまたどり着いた宮城県南部の町を回り、岩沼市玉浦地区などで巡回診療を行ったのが支援活動の始まりです。

その後診療をしながら住民の方にお話を聞き、診療の傍ら以下の様な活動を始め、2016年3月まで継続しました。

  • がれき撤去
  • 地元の方発案のイベントの開催手伝い(芋煮会、農業手伝い、神社再建など)
  • 内戦を経て独立したばかりのスーダンの子どもを招いた運動会
  • 地域の情報誌の立ち上げ協力

 

閖上地区に暮らす南部さん

閖上復興だよりの発行に携わってくださった南部さん。震災当時、津波の被害を受けた名取市閖上地区にあったご自宅は甚大な被害を受け、仮設住宅での生活が続きました。震災後7年目に当たる平成30年にやっと街へ戻ることができ、自宅の再建、そして新居に復興支援で出会った仲間を招くという夢をかなえられた南部さんは、強い思いと共に街の再生に取り組まれてきました。

地域にとって大事な神社や災害公営住宅の周りの写真を参加者に見せながら、以下についてお話を頂きました。

  • 地域の暮らしとつながりを取り戻す取り組みや難しさ (小学校の再開、結成し二年目になる町内会)
  • 震災の経験を生かした街づくり(町民で津波到達時にどこまで内陸に逃げられるかシミュレーション、垂直避難できる階段の各棟設置、企業の支援を受けプライベートを守れる避難所用の段ボールを備える)
  • これからの世代に向けて(水や自然と安全に触れ合う暮らしを取り戻すため閖上大橋の近くでSAP体験開催)

 

玉浦地区に暮らす谷地沼さん

岩沼にロシナンテスが入った際に知り合い、ともに復興支援に取り組んできた谷地沼さんは、ロシナンテスの活動に刺激をうけ、ご自身でも多様な活動を開始されました。

  • 散り散りになってしまっていた町の人々が、必要なつながりを取り戻せるように田植えや芋植えなど新たなイベント開催
  • 復興委員会やNPOの立ち上げ、コミュニティや居場所作り
  • CSRとして支援を名乗り出る企業と現場の様々なニーズを繋ぐ活動
  • 子どもたちに自助と共助を身に付けてもらうための避難訓練の浸透

特に避難訓練に関しては、

  • 学校の教室には誰がそこに避難してくるかの振り分けが掲示されている
  • 始めは町総出で行っていた訓練も、一度やれば安心したり、辛いことを思い出したくない等の理由で皆殆ど参加しなくなってしまった
  • せめて子供たちにはと学校の先生に何年も掛け合い避難訓練を取り入れてもらった
  • 結果、年十数回避難訓練をする学校もあり、サイレンを聞くと子どもたちは先生方よりも落ち着いた様子ですぐに身を守ることができるように

など、苦労を重ねながら着実に次の災害に備えている様子が印象的でした。

 

次に備えるために何が重要か

日本各地で同様の被害を防ぐために参加者の皆さまも交えて何が重要か話し合い、以下の様な意見が出ました。

  • 逃げることを考え、車のガソリンは半分になった時点で満タンにするようにするなど、当時必要だと言われた備えを習慣にする
  • コロナの際もそうだが、正しい情報を早く回せるかの差が自治体間で大きい。防災や対策は、いかに正しいことを速く回せるかが大事であることを意識し、整備できるとよい
  • 震災当時は有志のボランティアの短期の参加が多かったが、長期的に被災地で活動できる存在も欠かせない。上手く行政などが制度や体制を整えるべき
  • 私には何もできない、という事はない。出来る人が出来るときに、出来ることをおこなうのが大事

 

お話を受けて

10年間、地域や復興にひたむきに向き合ってきたからこその、鋭い視点や発想、取り組みは、明日起こるかもしれない災害で私たちが身を守るために欠かせないもので、幅広く共有して活かすべきだと思いました。南部さん、谷地沼さんのお二人を始め、被災された方々や被災地に携わる方々が、もう同じ被害を繰り返さないという強い思いや、様々な目標を持ち復興に取り組まれている事を改めて感じました。

また、子どもたちの体にしみ込ませるための避難訓練や街づくりに積極的に関わり、経験を子どもたちや専門家に伝え対策を生み出してゆくなど、スピード感を持ち次の災害に備えられている事が印象的でした。