「幸せ」とは?-スーダン・ザンビアの幸福度ランキング
こんにちは!インターンの田村です。
徐々に厳しい寒さも和らぎ、春の陽気を感じられる季節になりましたね。
突然ですが、皆さんはいま幸せですか?
本日3月20日(土)は「国際幸福デー」です。物質的な経済成長ではなく、人類の持続可能な発展・貧困撲滅・幸福の追求のためには、より公平でバランスの取れた成長が必要であるとして、2012年6月、国連総会により宣言されました。*1
幸福デーでは、「幸福の追求」をテーマに様々な取り組みが行われており、世界がより幸福であるようにと願うとともに、「幸福とは何か」について考える日でもあります。ということで、「幸せ」とは何かを一緒に考えていきましょう!*2
国連は、毎年、人口当たりのGDP、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由、寛容さ、腐敗の認識の6つの指標をもとに世界幸福度ランキングを発表しています。「2018年度 世界幸福度報告(World Happiness Report 2018)」*3によると、日本の幸福度は世界156ヵ国中、54位でした。ロシナンテスの活動地である、アフリカのスーダンやザンビアは、それぞれ137位、125位でした。
中でも健康寿命の指標は、上位の国に比べて低い値となっています。健康寿命のみならず、WHOの世界保健統計(World Health Statistics)*4によると、スーダンの平均寿命は、65.1歳で世界142位、ザンビアの平均寿命は、62.3歳で159位と世界的に見ても下位であることが分かります。その原因の一つが、医療体制の不十分さです。以前のブログ*5でもご紹介しましたが、最低限の医療がある都市部に比べ、地方では、医療施設が全くないというケースもあります。また、インフラ設備の不十分さも課題となっています。代表的なのが、水の問題です。清潔な水を自宅でいつでも飲める人の割合は、日本人は97%ですが、スーダンやザンビアを含むサハラ以南のアフリカでは24%にとどまります*6。不衛生な水を飲むことによって、病に罹り命を落とす人も少なくありません。
また、他国に比べスーダンで著しく低かった指標は、人生選択の自由です。これには、様々な要因が考えられます。その一つが、教育の機会の不平等です。首都は比較的女子にも教育機会があるものの、地方での女子教育重要性の理解は社会も親も不十分であり、いまだ多くの女子は小学校を卒業するのみです。また、特に地方では男子であっても、貧困により、高等教育に進むより、労働力が求められるケースは多々あります。他にも、地方の子どもが物理的な理由により通学が困難だという話もよく耳にします。このような教育機会の不十分さは、子どもたちの学習の妨げになるだけでなく、知りうる職業の幅を狭めてしまっています。
また、高等教育を受けられたとしても、その教育を十分にキャリアに生かせていない学生も多くいます。私立と公立では教育の質にかなり差があり、ハルツーム大学(日本で言う東京大学)の学生であっても、コネで就職する以外の方法を知らなかったという話を駐在員から聞きました。また、首都であっても異文化交流の機会が少ないため、将来を考える時に国外のトレンドや選択肢に思いをはせることが中々難しいのが現状です。
このように、スーダンやザンビアには、まだまだ医療不足や貧困など様々な解決すべき課題があるのは確かです。しかしながら、「幸せ」とは指標によって測れるものなのでしょうか?
私は、以前所属していた海外ボランティアサークルで幸せとは何かについてディスカッションしました。いざ幸せなのか問われると、「え、幸せってなんだっけ?」となってしまいませんか?当時の私は、「欲しいものを親に買ってもらえているから幸せ」だと考えました。そのような心持ちだった私ですが、ロシナンテスの活動を通して、「あれ、何でも欲しいものが手に入る=幸せというわけではないのでは?」と思うようになりました。
職員の方々とお話しさせていただく中で、「スーダンやザンビアの人たちは、物質的に豊かな生活ができている日本人よりも「幸せだ」と感じられる力が強いと思うことが多々ある」という言葉を耳にしました。例えば、先日、駐在員が、事業再開のためにスーダンに渡航し、現地スタッフの女性と再会しました。その際、彼女は「(主食である)パンもない、燃料もない、電気もない、スーダンには何もかもないよ!」と笑いながら話していたそうです。「そっか!じゃ、あるのは優しいスーダン人だけだね!」と駐在員が返すと、今度は大笑いしながら「そうなのよ!よくわかってるね!」とお茶目に返してくれたそうです*7。現在、スーダンはインフレの真っただ中にあり、給料が上がらないにも関わらず、ありとあらゆるものの価格が上がって、多くの現地人の生活が以前にもまして苦しい状況となっています。経済悪化に伴い、デモや軽犯罪を頻発し、ちょうど一か月前にあたる2月20日(土)には、ハルツーム(宮殿前)で警察がデモ参加者に催涙弾使用する事件も起こりました。そのような状況下でも、笑い話にできるスーダン人女性のタフさに、私は感銘を受けました。物質的に豊かな生活を送る日本人の私たちと比べて何もないからといって、勝手に「かわいそうだな」と思うのは、見当違いであったなと恥じています。
一言で「幸せ」といっても、住んでいる国・地域・環境が違えば、その概念も変わってきます。同じ言葉なのに捉え方が違うことは、とても面白いですね。優しい人々に囲まれて、辛い状況下でも笑顔を欠かさずにいて、彼女たちも私たちとは違う形の「幸せ」を持っていることに改めて気づかされました。
ここで、今一度、最初の質問に戻ります。皆さんにとっての幸せとは何でしょうか?国際幸福デーを機に、自分にとって、また、世界の人々にとっての幸福について改めて考えてみませんか?
Reference
*1 国際幸福芸術祭 HAPPY DAY TOKYO 2019
http://happyday-project.org/aboutus/
*2 United Nations. International Day of Happiness 20 March
https://www.un.org/en/observances/happiness-day
*3
United Nations. World Happiness Report 2018 -Chapter 2
https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2018/CH2-WHR-lr.pdf
*4
WHO. World Health Statistics 2016
https://www.who.int/docs/default-source/gho-documents/world-health-statistic-reports/world-heatlth-statistics-2016.pdf
*5
ロシナンテス活動報告ブログ 「およそ20歳違う平均寿命—スーダンの医療事情を知る」
https://www.rocinantes.org/blog/column/3636/
*6
ロシナンテス 会報「遠回り」第20・22号
https://www.rocinantes.org/upload/5c0794122704f.pdf
https://www.rocinantes.org/upload/5deddbb6be283.pdf
*7
ロシナンテス活動報告ブログ 「物価は3-4倍に…それでも笑顔を忘れないスーダンの人々」
https://www.rocinantes.org/blog/life_and_culture/3977/