闇レートの消滅?スーダン通貨切り下げの衝撃
アフリカ・スーダンの経済が揺れ動いています。
2月21日、スーダン中央銀行が1ドル=55スーダンポンド(SDG)の固定相場制だった為替を1ドル=375SDGに切り下げ、さらに変動相場制に移行すると発表しました。スーダンでの闇レートが1ドル=375SDG付近で推移しているのが現状であり、この闇レートと公定レートとの差をなくすのが目的のようです。
公定レートと闇レート
日本の皆様には闇レートとは何なのかと理解に苦しむ話でしょうから、説明をします。日本では、銀行や両替商に行ってもドル円はほぼ同じ為替レートです。
しかし、スーダンは銀行での公定レートは1ドルが55SDGですが、個人的な両替商では1ドルが375SDGになっていたのです。つまり、スーダンに行って自分の財布に1ドルがあるとすると、銀行に行って両替すれば55SDGにしかなりませんが、個人両替商に行けば375SDG になります。銀行での両替が公定レートで、個人的な両替商というのが闇レートということになります。公定レートと闇レートでは6倍以上の開きがありますので、簡単に言うと、公定レートでは100円で1つパンが買えるとしたら、闇レートでは100円で6つのパンが買えることになります。もちろん、この個人的な両替商は違法となりますが、国家全体にあまりに広まっていますので政府は取り締まりができずに放置した状況になっています。
スーダンの日用品を含む全ての商品は、この闇レートでの換算を元にした価格設定になっています。海外から商品を買う場合は外国通貨を用いなければなりませんので、スーダンポンドでの価格は暴騰することになります。実際にスーダンのインフレ率は年間で300%以上と世界でも有数のインフレ国となっています。
スーダン経済の推移
2007年には、1ドル=2SDGだったように覚えています。このときは、闇レートは存在せず銀行でも、両替商でも為替レートは同じでした。また、政府公認の両替商しか存在せず、スーパーの中にある両替商ではスーダンポンドからドルへは簡単に両替することができました。その当時は、内戦が終わり南スーダンは分離独立する前でしたので、原油輸出における収入があり経済状況はしっかりとしていたのでしょう。2011年に南スーダンがスーダンから分離独立し原油輸出が減少し、それを境に経済は大きく傾いていきました。その後、経済悪化の速度を増しながら、結局2007年に比べてスーダンポンドの価値は200分の1近くまでになっています。
揺れ動くスーダン
日々の生活の苦しさからバシール前大統領への不満が高まり、各地で大規模なデモが起こり、バシールを辞任にまで追い込みました。現在は軍民と文民とで構成される暫定政権になり、2022年に選挙を行い、新しいスーダン政府の誕生となる予定ですが、経済状況が好転せず、スーダン国民の日々の暮らしは苦しいままです。再び、国民による不満がこの暫定政権に向かい、デモが広がりはじめています。これ以上の政治的な混乱は致命的になる恐れもあります。
米国からのテロ支援国家の指定は昨年末に解除されたことなどスーダンにとって明るいニュースがありますので、今を耐え忍ぶことが大事だと思います。我々にできることは小さなことですが、スーダンの経済状況の好転を願いつつ、スーダンの人たちとともに事業を進めていきます。