特定非営利活動法人ロシナンテス

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その他2021.02.24

長期的な目線で現地の組織づくりをしたいーザンビア駐在員の田中にインタビュー

この度インターンの3人が、これからザンビア駐在員として初めてアフリカに行く田中陽介さんにインタビューしました。ロシナンテスに入職されるまでの経緯や今回の駐在への思い、具体的な事業の内容まで、約1時間にわたって色々お伺いしました!その内容を対談形式でご紹介します。

 

NGOに復帰したきっかけ

(東田):田中さんが以前書かれたご挨拶のブログを拝見しました。フィリピンのNGOで活動した後に、一度民間企業に戻られ、そこからまたNGOのロシナンテスに転職したとのことでした。NGOに戻ってきた理由として、ブログには、「自分の過去を振り返り、やはり私たちは、当時あの活動をやらなければならなかったのだと思えるようになったから」と書かれていますが、そのような思いが込み上がるきっかけとなったものは何ですか?

 (田中):挨拶のブログでは、7年前にフィリピンで携わっていた事業について触れました。この事業に関しては、良い面があった一方で、「本当に住民のためになってきたのだろうか」というのが心に引っかかっていました。大きな資金を2年間で使ったわけですが、事業が終わった後の現状を見た時に、金額に見合うような価値のある活動であっただろうかという疑問がずっとありました。現在、関わった住民と共に行った活動は発展というより、縮小してしまっています。長期的に発展を支えていく考え方は念頭におきつつも、それを実践しようとすると制約も多いのが現実です。その結果、長期的に発展を支える開発援助よりも、今まさに苦しんでいる人たちに支援していく緊急援助や人道援助が、NGOの役割としてより効果的ではないかと思いは捨て切れませんでした。

 その後、規模は縮小しても継続的に頑張っている現地の母親グループの存在やNGO職員になった地域の若者の存在は、再度私が行ったNGO活動を見直すきっかけになりました。大きな変化は残せないが、住民に身近な場所で小さな変化を積み重ねていけるのはNGOならではで、そのことが今は腑に落ち、再度NGOの活動に関わりたいと思うようになりました。

(東田):私自身は、NGOで働いた経験は無いのですが、活動する中で直面する壁や悩みに関して、すごく共感させて頂きました。

(田中):NGOというのは、クリーンな世界とか絶対的に正しい世界という風に一見思われがちだと思います。ただ実際に働いてみると悶々としたものを抱えながら、自分の中の良心と現実的な心が、葛藤し合います。今となってはそれ自体は健全かなという風に考えています。

(三国):そうですね。私も大学のサークルでボランティア活動を行っています。海外経験はないので、田中さんの経験に比べてしまうとまだまだ未熟なものだと思いますが、確かに活動の中で自分にできることと現地の状況が入る前に思い描いていたものとは違うと感じることが多々あります。

 

ロシナンテスを選んだ理由

 (三国):NGOの団体は他にもたくさんありますが、田中さんがロシナンテスを移動先として選んだ理由は何ですか?

(田中):ロシナンテスが、保健支援や医療支援を中心的な活動としているからです。私は、過去に3つの事業に携わっていました。 その中で、保健と医療に関するところはやはり柱だと思っていますし、それらがあったからこそ、ロシナンテスを選びました。

(田村):NGO団体で活動されて、そこから支援というものを単発的なものではなく、継続的・長期的なものとして考えるようになったとお伺いしました。その活動以前からNGOなどに関心があったのか、また、どのような活動をされていたのかということをお聞きしたいです。

(田中):大学のゼミは分岐点だったと思います。そこで出会った仲間に触発されたことがきっかけかなと思います。それをもとに、自分でカンボジアに行ってみたり、JICAの研修を受けてみたりしました。東京にいたので随所にそういう機会を設けられて、そこで関心自体を高めていきました。ただ、当時の民間企業での仕事が楽しかったので、すぐにその業界に移る、などは考えていなかったです。30歳を超えてこれからどうしようかと考えたときに、初めて他の業界や団体というものが選択肢に入ってきました。それからいくつか応募してみて、NGOに採用されました。

(田村):興味だけにとどまらず、ご自身で情報を収集されたり、研修に参加されり、とても行動力があり尊敬します。

 

ザンビア駐在に向けた準備

(三国):まもなく駐在生活が始まるということですが、具体的にどのような準備をされたのか教えて頂けますでしょうか?

(田中):具体的には、手続きに関することと、業務に関することの2つあります。手続きの面に関しては、ビザ取得のための手続きがメインです。ビザ取得に関しては現在まだ取得出来ておらず、これまでに3か月ほどかかっています。また、今回のプロジェクトは外務省の資金を得て行う事業になります。この事業の遂行方法の理解と、実際に現地に行ってからすぐに動けるように現地スタッフとのコミュニケーション、またどのように業務を行うのかを詰めていくスケジュールまでの落とし込みなども行っています。

(田村):海外に駐在となると、向こうの国の文化や食事なども楽しみたいと私は思うのですが、田中さんも事前にザンビアのことを調べるなどしていますか?

(田中):全く考えていません。先行でザンビアへ行っているもう一人の田中という駐在員がいます。彼が、「食材に関しては日本のものもあります」と言っていたので、食事に関しては心配していません。ただ、今一番不安に思っているのは身体です。7年前のNGOの仕事の際も、体調が悪くなることが多かったんですよね。急に腰が痛くなって立てなくなったり、偏頭痛が起きたりしました。そのため、「体力を落とさない」という面は重視しています。

(田村):私の場合は、「向こうの食文化を楽しみたい」や「有名な観光地に足を運んでみたい」など旅行気分で考えてしまうので、田中さんは本当に真面目でしっかりされた方なんだなと思いました。

(田中):そういうことも大切ですね。ストレスを発散する何かを持っていないと、このような仕事はおそらく続かないだろうと思います。以前に勤めていた団体でも、深夜まで働くことも多く、ストレスがたまりがちでした。なので、独自の趣味やストレス発散法を持つことは大切だなと思っています。

(田村):田中さん自身も、ストレス解消法をお持ちですか?

(田中):フィリピンにいた時は、現地の食事が合わず、日本の食事がどうしても恋しくなって、日本食屋さんに毎週通っていました。今思うと、食事では結構ストレスを感じていたんだなと感じます。あるいは、滞在施設の近くにあったジムで頻繁に体を動かすことはしていました。そのくらいですね。

(田村):ありがとうございます。私も今後海外に行くことがあれば、お伺いしたことを色々試してみたいです。

 

今回の駐在および事業について

(三国):今回の駐在では、具体的にどのようなプロジェクトを予定されていますか。

(田中):すでに具体的に決まっている事業は、大きく分けて3つあります。1つ目は、マザーシェルターの建設です。2つ目は、そのマザーシェルターで働くクリニックスタッフの育成です。エコーの導入なども考えています。3つ目は、そのクリニックスタッフと一緒に働いているボランティアの方々のスキルを高めていくことです。私自身は、この3つ目の事業を主に担当しています。現在は、その実行スケジュールや、何をやるべきかなどといったことを詰めています。

ボランティア研修の様子

(三国):どのくらいの期間、向こうに滞在する予定ですか。

(田中):特に決めているわけではありません。NGOの組織は、駐在の日本人がころころ変わっていくケースが多く、長期的な組織の成長にコミットする人材が少ない点は課題です。その意味で、長期的な目線で現地の組織を作っておきたいと考えています。ですので、プロジェクト業務も当然やっていきますが、総務・人事業務にも力を入れたいです。例えば、勤怠管理の方法は今も手書きです。個人的には色んなツールを導入するなどして、そのあたりの自動化を進め、誰が来てもやっていけるような仕組み作りをしたいと思います。

(三国):最近、社会貢献には長期的な視点が必要だと気づきましたので、非常にご意見に共感しました。

(田中):NGOではプロジェクトベースで人材が集められ、期間がきたら解散という形をとるところも多いです。ですので、駐在員も1つのプロジェクトだけに集中する人が多いんですね。それ以外の部分に目がいかないとなると、ずっと続いていく組織の下地のところでは、ほとんど何も変わらないということがよくあります。助成金などが主な資金源となっている組織は、特にそのような傾向にあると思います。これは、資金調達などと密接に関係していて、このような形態でしか雇えないといった理由もあるかと思います。ですが、長期的に見て、もう少し発展性のある組織は作れないだろうかと思ってきました。そういう部分に着手するとなると、1年は短すぎると思っています。

 

事業を進める上での予想される課題

(東田):長期的なプロジェクトになるとお聞きして、圧倒されます。今回のマザーシェルター建設などの事業のなかで、予想しうる壁や困難はありますか。

(田中):一番想定しているのは、コロナによる遅延です。また、この一年間のプロジェクトには3つの柱があるとお話しましたが、そのうち2つに関しては、日本人の専門家が関わります。大学の先生をお招きし、現地でセミナーをやってもらったり、エコーの使い方を実践してもらったりする予定ですが、それらが実行できるかに関してはかなり不透明です。また、仮に遠隔でやる場合、完全に効果がないとは言わないまでも、期待したいたほどではないものになる可能性もあります。ですので、そこを埋め合わせる何かは、別途必要だと考えています。

(東田):コロナで現地とのコミュニケーションがとりにくい、事業のクオリティーが下がるなどの懸念があり、大変だとは思いますが、頑張ってください。

 

ザンビアにおける新型コロナウイルスの影響について

(三国):現在、日本では緊急事態宣言が発令され、海外との交流も抑制されていますが、ザンビアでも何か規制等はあるのでしょうか。

(田中):日本人への渡航制限はありませんが、海外からの渡航者は2週間の隔離をするなどの一般的な手続きを踏む必要があります。感染データはそれほど信用できるものではないですが、感染自体は増えている傾向にあります。我々としては、ザンビアで働いている日本人医師から情報を収集するなどして、ある程度の現状把握はできているので、それを踏まえ、十分に注意した上で活動は続けられるだろうと考えています。

(田村):スーダンに駐在される方から、コロナ感染対策を現地でも徹底する必要があり、普段の業務に加えて、やるべきことや気をつけることが増えているとお伺いしました。頑張ってくださいとしか言えませんが、本当に応援しております。お体にはお気を付けください。

 

駐在に向けての意気込み

(三国):今までのお話でこのプロジェクトに対する熱い思いが伝わってきましたが、最後に改めて、駐在にむけての意気込みを伺いたいと思います。

(田中):2点取り組みたいことがあります。1つ目は、現地の組織の仕組みや人材のレベルアップです。仕組みづくりに関しては、前任者の方によってある程度作ってあるのですが、もう少しレベルを高めていきたいと思っています。人材の育成に関しては、我々自身ももちろんですが、現地スタッフのレベルをもう少し上げたいです。現状、ザンビア事業部でメインで働くスタッフは2名、ドライバーさんなどを含めるとトータルでは4名います。現地と我々との橋渡しは、その現地スタッフに頼ることになります。その橋渡しとなるスタッフが、新しいシステムを導入した際についていけないとなると、日本人スタッフの負担が増えてしまいます。それを防ぐためにも、ITスキルなどのレベルアップが必要です。

2つ目は、アプローチの仕方に関する考え方のすり合わせです。考え方の違いによるすれ違いは、どの国でも起こり得ます。私の経験上、日本人側と現地側の考え方のすれ違いが最終場面での対立の原因になるということが多々あります。ですから、我々の現地に関する考え方と、彼らの現地に関する考え方を、予めすり合わせておくことは必要不可欠です。こちら側の考え方を向こうに率直に伝え、相手側の考え方も聞いて、時間をかけてお互いを知りるプロセスは大切です。また、日本人内でも、同様に問題意識はすり合わせて置かないと、上手くいかないこともありますので、その点にも注意したいです。これらの二つに関して対応していきたいということで、意気込みに変えさせていただきます。

(三国):個人的に意気込みというと「○○ように、○○のために頑張ります」と回答をされる方が多いイメージですので、詳細に答えてくださって、田中さんがこれから行われるプロジェクトが、頭の中で非常に具体的に思い浮かんでいらっしゃるというのが伝わりました。私たち、インターン生にできることは限られておりますが、心から応援しています。本日は、お忙しい中お時間をいただいてありがとうございました。