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スーダン2020.07.09

見てきました、『ようこそ、革命シネマへ』!

『ようこそ、革命シネマへ』は、映画を愛する4人のおじいちゃんたちが、軍事独裁政権下、表現の自由を制限されていたスーダンにおいて、映画上映会の開催を目指して奮闘するドキュメンタリー映画です。もともと4月から公開の予定だったところ、新型コロナの影響で延期になっていたのですが、先月やっと見に行くことができました。

[映画紹介]
1956年の独立以来、常に国内に紛争を抱えてきたスーダン。クーデターにより政権は幾度となく変わり、1989年にはイスラム急進派による軍事政権が成立、長期にわたる独裁的な支配を続けていた。
独立直後の1960〜70年代に海外で映画を学び、スーダンで映画作家となった4人。彼らの作品は海外で高く評価され、母国スーダンに映画という豊かな文化を根づかせようと切磋琢磨しあう仲間たちだった。1989年、映画製作集団「スーダン・フィルム・グループ」を設立するが、同じ年に軍事独裁政権が誕生し、言論の自由をはじめ様々な表現の自由が奪われる。彼らは思想犯として拘禁されたり、国外への亡命を余儀なくされていた。
長い年月を経て、4人は母国で再会する。「映画を再びスーダンの人々のもとに取り戻したい」—— 還暦を過ぎた4人は、様々な障壁にぶつかりながらも、冗談を飛ばし、陽気に笑い合いながら、夢に向かって穏やかに力を合わせていく。彼らが失ったもの、そして作りたいと願った映像を通して、愛する国の美しさや恐怖が浮き彫りになっていく。
(公式サイトより抜粋)

 

映画を奪った軍事政権

スーダンでは、植民地支配から独立した1956年以来、軍事政権→クーデターによる政権崩壊→再び軍事政権…と、民主主義と軍事政権が繰り返されてきました。(本作品が作られた4年後には、彼らから映画を奪ったとされるバシール軍事政権が、民衆蜂起によって崩壊しています。)

1958  アブード軍事政権樹立
1964  アブード軍事政権崩壊
1969  ヌメイリ軍事政権樹立
1985  ヌメイリ軍事政権崩壊
1989  バシール軍事政権樹立
2019  民衆蜂起によりバシール政権崩壊

4人のおじいちゃんたちが、ロシアの有名な映画学校などで学んで帰国し、さあこれからスーダンの映画界を盛り上げるぞ、というタイミングでバシール政権が誕生します。それまで海外でも評価の高い作品を作ってきたにも関わらず、映画を撮ることは禁じられ、投獄される、国外への亡命を余儀なくされるなど、それぞれが苦しい時代を過ごしました。

市民が新しいことを始めたり、海外から様々な知見を得たりすること、時にはただ集まることすら、独裁体制を敷く軍事政権にとっては危険な要素となります。

実際ロシナンテスがスーダンで活動するにあたっても、活動を監視される、ビザが下りない、ときには事業地への移動が許可されないなど、(表向きは外国人の安全確保という大義名分で)スーダン政府から様々な制約を受けてきました。国際NGOは、布教活動をしたり、市民に余計な考えを植え付けたりする可能性があると警戒されるからです。それは、14年活動を続けても変わらなかったバシール政権の姿勢でした。

映画では、表現の自由が奪われていく中で、実際彼らにどんなことが起こり、彼らがどんな想いを抱えていたのかは詳しく語られません。しかし映画の上映に向けて試行錯誤しつつ、「大変だったあのとき」を笑いながら振り返るシーンは、生き抜くことの美しさを感じ、生きるっていいな、と思えるとても印象深いものでした。

 

あたりまえではないこと

先日、東京都知事選がありました。投票率は55.00%で、前回2016年の59.73%を下回る結果となりました。もちろん新型コロナの影響もあったかと思いますが、およそ半分の人が、権利を放棄したということです。

投票率が低い、という話になるたびに、学校で習った普通選挙が実現するまでの歴史を思い出します。

日本の人々が生まれや貧富にかかわらず参政権を持てるようになるまでには、まさに”不断の努力”がありました。多くの先人たちとその家族が、弾圧を受けたり、逮捕されたり、心折れたりしながら、それでも諦めずに闘い続けた約30年があって勝ち得た権利です。しかもその後、女性が参政権を得るためには、さらに20年の努力が必要でした。

映画を作ること。投票すること。

好きな本を読むこと。好きな国に旅行に行くこと。好きな人と好きな時に会うこと。

私たちの生活の中にあふれるたくさんのことが、あたりまえでない国があります。そして日本においても、未来永劫続いていく保証はどこにもない大切な権利です。ひとつひとつをもっと大切にしなくてはいけないし、ひとつひとつ楽しみながら生きていきたいなと、改めて思える映画でした。

 

まだ上映している地域も!

おじいちゃんたちが、危ない運転にぶつぶつ文句を言ったり、パソコンの操作がうまくできずに若い子にお願いしたり、老体に鞭打って故障した車を押したり、椅子に上って腰を痛めたりするマイペースな姿には、思わず口元が緩みます。電気が止まったり、砂ぼこりでスクリーンが見えなくなったり、スーダンの日常あるある!も盛りだくさん。そして映画を見て笑っている人々を見つめるおじいちゃんたちの優しい目線に、思わずぐっときてしまいます(歳でしょうか…)。

色々難しいことは置いておいても、後から思い出すたびに、じんわりじんわり、深くまで染み渡る映画です。東京での上映は終わってしまいましたが、まだ上映している映画館もあります。お時間のある方は、(もちろん新型コロナの影響を鑑みつつ…)ぜひ足を運んでみてください。

上映情報はこちら。
https://theaterlist.jp/?dir=yokosokakumei

スーダンでは、昨年の政変以降も、市民が望む「民主主義」を追求する動きはまだまだ活発です。自分たちの国の未来に向き合う人々に敬意を表しつつ、引き続きスーダンに心を寄せていきたいと思います。