どんな変化が?今年のラマダンの過ごし方
日々の暮らしの中で、月齢を意識したことはありますか?
イスラム教の暦は月の暦です。月の暦、という言葉になじみのない方も多いかもしれませんが、月が満月から次の満月になるまでを1ヶ月と数える暦です。(日本も古来は月の暦を使っていましたが、現在は地球が太陽を回る周期を基にして作られた太陽暦を使っています。)2020年、今年のスーダンのラマダン(断食月)は4月25日から5月23日まででした。
イスラム教における大切な習慣、ラマダン
ラマダンとは、本来はイスラム教の暦における9月のことを指します。しかしその月を聖なる月とし、自身の信仰を清めるために、欲を捨てる期間として日中の飲食を断つことから、断食をおこなう月としても知られています。この期間は食欲だけでなく、そのほかの禁欲も課せられます。
ラマダンは新月とともに始まり、月が満ちて欠け、新月とともに終わります。情報渦巻く摩天楼の大都会でも、電気や電波のない砂漠の中でも、世界のどこにいても月を眺めることができれば、約1か月続くラマダンのどのあたりなのかを知ることができます。
イスラム教徒たちはラマダンの間、日の出から日没まで一切の飲食を絶ちます。日没後には家族や親族、友人知人が集まって、イフタールと呼ばれる朝食(いつも以上のごちそう)を食べ、甘い紅茶や珈琲を片手におしゃべりを楽しむことがスーダンの当たり前の風景でした。
また、ラマダン最後の10日間は、アルアシャラ・アルアワーヒル(直訳するとそのまま”最後の10日”)と呼ばれ、日付が変わってすぐの深夜から早朝までモスクでお祈りが行われます。
しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、今年のラマダンは、そんないつものラマダンとは一変してしまいました。
ラマダンにおけるCOVID-19の影響
スーダンでは、全土でモスクや教会など宗教施設での礼拝が禁止され、外出制限が行われています。首都ハルツーム州では24時間、その他の州でも夜間は外出禁止となっています。Stay Home(家で過ごそう)が呼びかけられており、特に都市部では友人知人で集うことも控え、都市部では保健省からの呼びかけ通り、自宅で家族とともに過ごしているそうです。
現地スタッフや事業地の協力者の方から聞いた今年のラマダンの過ごし方を少しご紹介します。
- 首都中心部在住:モスクは閉鎖し、家で礼拝をしている。イフタールは家族だけ。
- 首都郊外在住:モスクは閉鎖し、家で礼拝をしている。イフタールは家族だけ。
- 首都郊外在住:モスクは閉鎖し、家で礼拝をしている。6割位の人が例年通り多数で集まってイフタールをしている。
- 首都郊外在住:モスクは閉鎖し、家で礼拝をしている。ラマダン中は州外に帰省している。イフタールは親戚だけ。
- 地方州都在住:モスクは閉鎖し、家で礼拝をしている。イフタールも家族だけ。
- 地方の村在住:モスクで礼拝、イフタールも例年通り皆で集まっている。
日本よりも厳しく規制がされているスーダンですが、人によって行動に差が出るのは日本と同様ですね。話を聞いていると、特に村落部においては普段とあまり変わりない生活を送っているようです。また、州をこえての移動は原則禁じられていますが、ラマダン期間に申請をした上で州を越えて帰省する動きもありました。宗教上の大切な行事ということもあり、考え方にもより幅がでる部分があるのかもしれません。
現在は銀行もロックダウン(都市封鎖)の影響で正常稼働していません。ラマダン中、市場はいつも以上に賑わう場所ですが、COVID-19の拡大防止のため、大きな市場は閉鎖されているところも多く、経済へも甚大な影響になることが予想されます。
COVID-19によって変わるものと変わらないもの、変えられるものと変えたくないもの。新たな信仰のかたちも自ずとできていくのかもしれません。