もっとも多くの人間の命を奪っている生き物とは
突然ですが、人類にとって世界で最も危険な生き物は何かご存知でしょうか。大型の肉食獣を思い浮かべるかもしれませんが、多くの人間の命を奪っている生き物は、実は私たちの生活のとても身近なところに潜んでいます。
地球上で最も人間の命を奪っている生き物
それは「蚊」です。蚊は私たちに、つらいかゆみを与えるだけではなく、様々な病気も媒介します。主な蚊媒介感染症には、ウイルス疾患であるデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎、ウエストナイル熱、黄熱、原虫疾患であるマラリアなどがあります。
このように蚊が原因となる様々な感染症が存在していますが、中でもマラリアは結核、エイズと並び人間に甚大な健康被害を与えている世界三大感染症の1つです。マラリアは、寄生虫を有したハマダラカに刺咬されることで人に感染します。マラリアにはいくつかの種類がありますが、重症化しやすく致死率が高いものは、熱帯熱マラリアと呼ばれ、アフリカが流行の中心になっています。インフルエンザや風邪の症状に似ていますが、重症化していくと致命的な臓器障害を引き起こします。また、妊娠中のマラリア罹患は、低体重出生や生まれてくる子どもの貧血を招くことが確認されている危険な病気です。
ロシナンテスが活動するスーダンとザンビアでも多くの人がマラリアで命を落としています。予防も治療もできる病気にもかかわらず、なぜなかなか状況が改善しないのでしょうか。
24時間以内に病院へ?
2018 年には、推定 2 億 2800 万件のマラリアが世界中で発生し、死者は40万人に上るとされています*1 。この発生件数の内、8割がサハラ以南アフリカとインドで発生しました。つまり、マラリアの発生は貧困地域と関係していると考えることができます。マラリアを運ぶ蚊が発生しやすいのは、下水や汚水、水たまりなど汚い水が放置された場所です。下水設備が整っておらず、水たまりや池などがあると、蚊が卵を産みやすく、ここにボウフラが発生し、マラリア発生の原因になります。インフラの整備の遅れがマラリアの原因に繋がっているのです。
マラリア対策の代表的なものには予防薬がありますが、高価なため、すべての人に行き渡らせることは簡単ではありません。また毎日服用する必要があるといった条件や様々な副作用もあります。
それに比べて安価で効果的と考えられているのが蚊帳で、駐在員も宿舎では蚊帳を使用しています。
また、近年では殺虫剤処理がなされた蚊帳がアフリカで配布される取り組みも行われました。しかし、サハラ以南アフリカでマラリアのリスクにさらされている人々の内、蚊帳を使用できている割合はおよそ50%で、すべての人には行き届いていません。
熱帯熱マラリアは、発症後24時間以内に治療を開始しなければ、重症化し命を落とす確率が高まります。しかし、アフリカの村落部には十分な治療や診察をするための施設が不足しています。一番近い診療所ですら、1日ではたどり着けない地域もありますし、時間と費用がかかるため治療を諦めるという人もいます。
マラリア検査のできる体制を
ロシナンテスがスーダンで建設した診療所では、現在顕微鏡を用いたマラリア検査が行える医師(慣れないと難しい検査のため、すべての医師ができるわけではないのです)や備品が整い、マラリアの検査が迅速に行えるようになりました。
マラリアで命を落とす人を減らす第一歩です。
すべての課題を一挙に解決することは難しいですが、一歩一歩状況を改善できるよう引き続き頑張っていきたいと思います。