再びスーダンへ
いつもロシナンテスを応援してくださりありがとうございます。皆さまにご心配をおかけしていますスーダンですが、治安状況が良くなってきているとの報告があり、外務省の危険度レベルも下がったため、情勢を見極めるために現地へやってきました。そのご報告をしたいと思います。
スーダンの現在の状況
スーダンでは4月にクーデターが起こり、30年間独裁政治を続けたバシール大統領が退陣しました。その後、軍部と民衆とで政権のあり方に関して協議を重ねていましたが、その最中の6月3日(ラマダンの最終日)、軍が平和的デモを行っていた群衆を強制排除し、多数の犠牲者が出ました。首都ハルツームは治安が一気に悪化し、外務省の定める危険度レベルは3(渡航中止勧告)まで引き上げられました。この事態を受け、急遽日本人スタッフを国外退避させ、スーダン人スタッフのみでオペレーションを行う体制に切り替えていました。
1歩間違えば内戦に突入する危険もありましたがなんとか持ち直し、軍と民衆による協議の末、8月には暫定政権で共同統治を行っていくことで合意がなされ、新政府が発足しました。外務省の危険度もレベル2(不要不急の渡航はやめて下さい)となったため、今回の渡航に踏み切りました。
新しいスーダン
経験上、空港でのセキュリティ、税関の手続きなどでその時の情勢がおぼろげながらに理解できます。今回は日本から持ってきた支援物資が税関で引っかかってしまいましたが、我々がNGO団体であること、これらが支援物資であり無料で配布することを説明するとあっさりと理解してくれ簡単に通過できました。NGOに対しての対応は随分と良くなってきていると感じました。
今回は、国外退避していた職員の小川とローカルスタッフが綿密に事前打ち合わせをして、入国の翌日に北コルドファン州へ行く計画を立てていました。従来では、移動許可を得るのに1週間程度かかっていたため心配していましたが、HAC(スーダン政府のNGOを管理する部署)からの許可は1時間でもらえたとのこと。入国翌日に移動できるというのは私にとっても初めての経験でしたが、何の問題もなく北コルドファン州へと行くことができました。道中、セキュリティチェックの検問があるものの、「NGOであるならば何の問題もない」との様子で取得した許可証を見せる場もなくすんなりと通過できました。
さっそく北コルドファンへ出張
今回の北コルドファン州訪問の目的は、完成した給水施設を北コルドファン州政府に引き渡すことと、その後の状況をフォローすることでした。
まずは水省で、如何にコミュニティに主体性を持たせて給水所の維持管理ができるかを協議し、その場で引き続きしばらくの間はロシナンテスと協働して給水所の管理を行っていきたいと依頼されました。
その後、北コルドファン州の州都オベイドから車でオフロードを3時間。移動の連続でしたが、5月に給水所建設を行ったオンムサマーマ村に到着しました。関空を出発して55時間後のことでした。
オンムサマーマ村で式典に出席
オンムサマーマ村では、大勢の人たちが炎天下の中を整列して待ってくれていました。歓迎式典が用意され、それも子どもたちが中心となっていてとても感動的なものでした。現地のパートナーNGO、施工業者、水省そしてロシナンテスが、地域の代表者から表彰状をいただきました。
給水所が完成した後に来た前回の視察では、子どもたちが遠くまで水汲みに行く必要がなくなったと大変喜んでいたので、式典の最後の挨拶では、子どもたちにむけて「この地域のため、新しくなったスーダンのためにしっかりと勉強して下さい」と、マイクを介さずに地声で大きく叫びました。彼らの胸に届いたでしょうか。
給水所はきれいに維持され、周辺には花も植えられていたのには驚きました。今まで木を植えた、野菜を植えたなどのケースはありましたが、花は初めてです。小さな赤い花が我々を歓迎するように咲いていました。
今の所、給水所の不具合はまったくないとのことでした。水省の役人とコミュニティリーダーたちとの協議では、コミュニティが主体性を持って維持管理体制を築くことに合意、それを州政府とロシナンテスがともにフォローをしていくことになりました。会計管理もきちんとなされているとのことです。
NGOへの風当たりは改善された?
また今回の訪問にはHACから2名のスタッフが同行し、我々の事業の評価をしてくれました。彼らは「水管理委員会の中に女性を入れてはどうですか?」とアドバイスしてくれました。男中心の社会であったスーダンでしたが、このような意見が出てくるようになり、新しい息吹を感じました。またHACのスタッフが同行すると以前は、「これはしてはいけません、ここには行ってはいけません」などの注意を受けて我々の行動が制限されていましたが、今回はそのようなことは一切ありませんでした。
ホイダさんと再会!
前回、「大きくなったら医者になりたい!」といってくれた15歳の女子生徒のホイダさんは、私のところに駆けつけてくれ「日本の皆様、ありがとうございます。しっかりと勉強して医者になります」と再度決意を述べてくれました。
出発する朝にもわざわざ挨拶に来てくれ、私はとにかく嬉しくて何かを彼女にあげたくてカバンの中を探ると、熊本でラグビーワールドカップを観戦した時に済々黌高校の武石敏章先生からいただいたラグビーボール付きのキーホルダーが見つかりました。気に入ってもらえるかどうかわかりませんでしたがそれを手渡しました。「このキーホルダーをお守りにしてくれるかな、でもイスラム教だし・・・」と不安でしたが、彼女は喜んで受け取り、にっこりと微笑んでくれました。彼女が大学に行き、医師になるまで応援していきたいと心の底から思いました。
スーダン入国数日前に前大統領派によるデモが行われナイル川にかかる橋が封鎖されたりと、完璧に治安状況が良いとは言い切れませんが、最悪の事態からは随分と状況は良くなってきてきます。
さらに各方面からの情報を集め、スーダンでの今後の体制を総合的に判断していきたいと思います。