特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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スーダン2007.05.01

冷やし中華が食べたい

スーダンに暮らす人々は砂嵐のことをハブーブと呼ぶ。
夕方、珍しく勉強をしていたら近所の子どもが外で騒ぎ出したので、
なんだろうかと窓の外に目をやった。
数百メートル先に高層ビルの高さのような茶色い煙の壁が見える。
視野の端から端までうごめく模様が伸びている。
表面にはいくつもの波がぼこぼことふくらみ、ゆっくりとお互いに飲み込みあっている。
まるで目の高さで雲の動きをみているようだ。
あまりにも規模が大きく、僕は理解できなかった。
あの茶色の雲はなんだろうかと思った。
それが規格外のハブーブだと気づいたのは、
しばらく見つめた後だった。
それは津波のように残酷な圧力で迫ってくる。
僕は急いで家中の窓を閉める。
20秒後、カメラを持って外に出ようとした瞬間、
色の濃い突風がドアから流れ込んできた。
目をつぶり、下を向きながら、風に逆らってドアを閉める。
もう嵐の中に入ったのだ。
一瞬で光がなくなった。
数十メートルはあるだろう分厚い砂の煙幕を太陽の光は超えられない。
突然の暗さに目は慣れず、
家にぶつかる砂と風の音だけが聞こえる。
土のにおいが溢れる。
僕は手探りで蛍光灯のスイッチを探す。
照らされた室内の空気は黄色く濁っている。
窓の隙間から小麦粉のように細かい土埃が勢いよく撒き散らされているのだ。
それは空中を漂い、やがて部屋の至る所に平等に降り積もる。
僕にも平等に。
口に入る砂の居心地が悪く、何度もうがいをする。
締め切った部屋は暑さを増して、皮膚を濡らす汗に砂が着く。
扇風機も動かせないが今は仕方がない。
これが止んだらシャワーを浴びよう。
2時間後にはだいぶ風が弱くなったものの
その後もしばらく、感情も無くしつこく吹き込み続け、
既に夜になった部屋には細かい砂塵だけが大量に残された。
砂に覆われた床を歩く。(足跡の部分がもとの色)
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(クリックすると大きな写真が見れます)
荒井繁