軍事政権に終止符?今回の政権崩壊の流れと特徴(2) #スーダン情勢
こんにちは、一時帰国中のスーダン駐在スタッフ小川です。
およそ30年続いたバシール政権が崩壊し大きな転機を迎えている今のスーダンについて、現地で見聞きしたことをお伝えすべく、5/19に報告会を開催しました。
イベントでお話した内容を、2回に分けてレポートするブログの後編です。(前編はこちら。)今回は、デモの頻発や政権交代が、一般市民の生活やロシナンテスの活動に与えた影響についてまとめたいと思います。
治安の悪化
デモを主導していたSPAから発信される連日のデモ予告を、様々なルートを通じて情報収集し、対応していました。アラビア語で出回っている情報を大使館やスーダン人スタッフが翻訳して共有してくれていました。それらを元にデモが行われる場所の近くにはいかない、時には自宅待機するなど、スタッフの安全確保を心がけていました。首都を中心に、催涙弾・催涙ガスの使用、銃撃戦の発生もありましたので、やはり緊張感はありました。
物価の高騰
- パンは3倍
- 燃料は4.5倍
- その他日用品も日に日に上昇
政府による小麦の補助金撤廃、燃料価格の引き上げにより、パンやガソリンの価格は一気に引き上げられました。その他、水や生活用品の価格も日に日に高騰し、国民の生活は厳しくなっていきました。
経済混乱による現金不足
- 銀行預金の引き出し上限:一日2000スーダンポンド(≒5000円)足らず
USDからの両替も困難前提として、元々スーダンは現金社会ですので、クレジットカードが利用できません。昨今の経済混乱により、銀行を含め、スーダン国中にとにかくお金がない状態が続いていました。
ロシナンテスのスーダン事務所でも、長期間現金の引き出しができなかったことにより、現金不足問題が発生。たまたま銀行から、明日一日に限ってUSDからスーダンポンドへの両替が可能と言われ、慌てて出張中の川原にUSD現金を持ち込んでもらい、現地通貨へ両替して対応したこともありました。
公共交通機関への影響
橋の封鎖、バスの運行取りやめ、渋滞が相次ぎました。
ロシナンテスの日本人スタッフは事務所の隣に住んでいるので、出勤が困難!とはならなかったのですが、バスで通勤しているスーダン人スタッフは、自宅待機などを強いられる場面もありました。また私たちも、出張からの帰りに普段通っている道が通行止めになり、5時間ほど遠回りする道を選んで帰ってきたこともありました。
NGO団体への影響
- 治安の悪化・外務省リスクレベル引き上げ
- →事務所閉鎖や出張取り止め
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- →日本人スタッフの退避(JICA、民間企業も同様)
- 政府機能の凍結 → VISA取得や移動許可への影響
- ローカルNGOの活動停止 → 活動継続への影響
- 為替レートの変動 → プロジェクト予算の組みづらさ
- 燃料価格の高騰、調達困難 → 移動手段の確保困難
デモ、政権交代は、治安の悪化のみならず、私たち国際NGOの業務そのものへも大きく影響を及ぼしています。先ず、政府機能の凍結についてです。通常私たちが活動をする中で、スーダン入国にあたってのVISA取得、活動地への移動許可、現地職員の人事関連の手続きなど、あらゆるプロセスはNGO管轄組織を通して行う必要があります。非常に煩雑な仕組みですが、現在の暫定政権下においては、当該組織のメンバー入れ替えや方針決定までの暫定期間であることが影響し、種々のプロセスが簡略化されているような場面があります。
また、国際NGOが現地で活動するにあたって重要となるのが現地NGOとのパートナーシップです。政権交代を経ていくつかの現地NGOが活動停止命令を受けているとのことで、国際NGOの活動継続への影響も生じかねません。幸いなことに、私たちのパートナー団体は現在も変わらずに活動を継続できています。
さらに、不安定な為替レートは事業予算の設定を難しくしていますし、燃料費高騰は活動地への移動制限や日々の管理費増加にもつながっています。
ロシナンテスの今
政治や経済が不安定な状況において、先行きが不透明な部分も多々ありますが、スーダンでは現在もスーダン人スタッフの協力のもと着々と活動が進んでいます。ロシナンテスの活動地である北コルドファン州では、建設中の給水所が今月完成。地域の人々は新たに水が得られる喜びを語ってくれています。また、首都の事務所に次ぐ2つ目の事務所開設の予定もあり、今後は一層現場に近いところでの仕事ができるようになることを期待しています。
今回民衆の手で成し遂げられた政権交代が、スーダン明るい未来に繋がることを願うばかりです。スーダンに一日も早く平和と安定が訪れることを信じて、これからもスーダンの人々と共に、事業を進めていきます。