不衛生な水をそのまま飲用して感染症も。スーダンの水事情とは
世界水の日に、スーダンの水事情を考える
世界水の日は、水の大切さや、きれいで安全な水を使用できるようにすることの重要性を世界中で考えるための日です。1992年12月の国連総会で制定されました。
世界では、8億4,400万人、およそ9人に1人が清潔な水を利用できません。
飲めば体調を崩すとわかっていても、不衛生な水を子どもに飲ませるしか選択肢がないお母さんたちがたくさんいます。安全な飲料水が手に入らないというだけではなく、水くみに時間を取られ、働いたり学校に通ったりする時間が取れない、農作物を育てるための水が確保できない、といった問題も発生します。また、不衛生な川やため池の水をそのまま飲用しているために、感染症にもかかりやすくなります。
砂漠の国、スーダン
水事情はスーダンでも深刻です。スーダンというと砂漠、というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際、国土の大半は北のサハラ砂漠から続く砂漠地域です。
Google Earthで見ても、大半が乾いた地であることがわかります。
スーダンの年間平均降水量を見てみると、南スーダンとの国境付近では最大600ミリ程度ありますが、北上するにつれ少なくなり、エジプト国境付近では25ミリ以下まで減少します。東京の年間平均降水量が1500ミリ程度であることを考えると、雨量の多い地域でも東京の3分の1程度しかないということがわかります。
スーダンの水の課題
水が貴重なスーダンでは、人口のおよそ40%が家の近くで清潔な水を手に入れられない環境で生活しています。地域によって水を得る方法が変わってくることから、その課題も様々です。
川の近くでは、川の水を利用するのが一般的です。スーダンの代表的な川「ナイル川」は、エジプトから流れ込む世界最長の河川で、スーダン領内でアトバラ川、青ナイル川、白ナイル川といったいくつかの支流に分かれます。このナイル川本流と支流の沿岸地帯では、川から飲料水や灌漑用水を確保しています。
特に都市部では、川の水を浄水場で処理し各家庭へ配水する水道が張り巡らされており、日本と同じように蛇口をひねれば水が出てくる環境が整っています。しかし雨期の間には、水量と濁度が急激に上がるため、浄水場の処理能力が追い付かず、蛇口から出る水も茶色くなってしまうという課題があります。下記動画は、理事長川原の自宅の水道です。普段はそのまま飲めるきれいな水が出ますが、雨期になると茶色く濁った水が出てきます。
水道の恩恵を受けられていない沿岸の小さな村落では、直接川から水をくんで利用しているところも数多くあります。しかし川には、人や家畜の排泄物を含む様々なものが流れこんでおり、特に下流になればなるほど水は汚染されています。人々は、感染症の危険があることは理解していますが、他に選択肢がないために、不衛生な水を飲まざるを得ない環境にあります。
川から離れた村落では、水を確保するためには、井戸のようなほかの手段を考える必要があります。しかしスーダンの地下水は深いところにしかなく、井戸を作るには大掛かりな掘削が必要です。また水を引き上げるポンプを動かすために、電気の通っていない村落では発電機やソーラーパネルも必要となり、さらに多額の費用がかかります。そのため住民の力では設置が難しく、雨期の間にできた池などから直接水をくんだり、給水車から高いお金を払って水を買ったりしている地域も多いのです。
年間降水量分布の黄緑より南のエリアでは、雨期の間に降水量が増大します。そのためこの雨水を利用して、ハフィールと呼ばれる雨水貯水池を活用している村落もあります。ただ、家畜の糞尿が入らないようフェンスで囲ったり、浄水の仕組みを取り入れたりせずに利用している場合、川や池と同様に汚染された水を飲むことになります。
水事業を進めていきます
このほかにも、スーダンは水にまつわる課題を数多く抱えています。ロシナンテスは、医療活動と同時に水事業を推進しています。いくら医療を届けても、水が原因でたびたび病気になる人々を見て、やはり根本的な問題解決のためには水の問題に取り組む必要があると考えたからです。
きれいな水が、百の薬よりたくさんの命を救うこともあります。すべての地域の問題を一気に解決することは難しいですが、ご縁をいただいたところから、少しずつ状況を改善できるよう事業を進めていきたいと思います。