まだまだできることがある。砂漠の村での栄養改善
今回は、北コルドファン州の栄養改善事業についてです。
ロシナンテスは、北コルドファン州オンムダム・ハージ・アハメド地域にある7つの診療所で、国連WFP(世界食糧計画)と現地NGOのSIDO(「サイド」と発音します)と共に栄養改善事業を展開しています。
今回はWFP、SIDOのスタッフとともに3つの診療所を視察しました。加えて、州政府の人道支援委員会の委員長も参加し、州政府のこの問題への関心の高さを感じました。
この栄養改善事業は、生後6ヶ月~59ヶ月の子どもと、妊娠中、授乳中の女性を対象にしています。
成長期の子どもや、胎盤や母乳を通して赤ちゃんを育むお母さんが栄養不良に陥ると、子どもの成長発達が妨げられて障害が生じたり、病気に対する抵抗力が低下したり、深刻な場合は死に至ることもあります。
そんな悲劇を防ぐための活動が栄養改善事業です。
本事業の対象となっている診療所には、数名ずつボランティアがいます(大多数が女性ですが、男性も活躍しています)。
ボランティアは、各村のリーダーからの推薦を受け、3日間の研修を修了しています。まず、彼女たちが村を訪問して栄養不良の人がいないかどうかをチェックします。栄養状態チェックでは、巻尺を使って二の腕の周りの長さを測り、二の腕の太さによって「正常」「栄養不良」「深刻な栄養不良」と判定します。
そして「栄養不良」「深刻な栄養不良」と判定された人に、さらなる検査のために診療所に来るように勧めます。
診療所にやってきた栄養不良の子どもや女性をみるのは、栄養アシスタント(この地域では全員女性)です。身体測定をし、栄養不良の程度に応じた栄養補助剤を渡します。
また、栄養アシスタントはWFPや地域保健局等が実施した研修で栄養について学んでおり、母乳や離乳食の大切さや栄養価の高い食事についての情報を伝えるのも彼女たちの大事な役割です。視察中、この地域でも比較的大きなオンムダム診療所では時間をかけて色々な話を聞くことができました。栄養アシスタントの一人は、研修の修了証を誇らしげに並べながら「たくさん勉強させてもらったので今の仕事で困っていることは特にないけど、年少期の子どもの栄養についてもっと学びたい」と話してくれました。
栄養補助剤支給の対象となった人たちは、「正常」と判定されるまで毎月チェックにやってきます。この日のオンムダム診療所でのフォローアップ対象者36人のうち、12人は栄養状態が改善し「正常」と判定されたとのことでした(7ヶ月経っても改善がみられない場合は、もっと大きな施設で対応してもらうことになります)。
この地域では7割以上の家庭が牧畜や農業で生計を立てています。自然の恵みである家畜や農産物に依存する生活は、水のあるなしにダイレクトに影響を受けます。ある栄養アシスタントからは「11~7月の乾季の間、特にソルガムの刈り入れが終わった1月以降は農作物もとれなくなり、家畜のミルクも出なくなるので、最も栄養状態が悪くなる」との声を聞きました。また、舗装路を降りてから車で2時間近くもかかるオンムダムでは、地域外から食糧を運び入れることも容易ではありません。
栄養問題は、住民の貧困や、知識不足、食習慣、そして、公共サービスの不足や人口増加、厳しい自然環境など、様々な要因が複雑に絡み合っており、すぐに解決できるような問題ではありません。まるでドン・キホーテ(とロシナンテとサンチョ)の前に立ちはだかる大きな風車のようです。一度にその要因全てを解消することは難しいですが、地域の関係機関の皆さんの思いを聞いて、栄養改善は決して「手の届かない星」ではないと感じました。
これからも現地の人たちと話し合ってそれぞれの役割を確かめながら、ロシナンテスとしてできることをひとつひとつ進めていきたいと思います。