特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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スーダン2015.02.14

モバイルクリニック スタッフ トレーニング①村の風習・習慣~医療サービスを断られたら~

いつもご支援いただきありがとうございます。
2月9日10日に巡回診療スタッフのトレ―ニングを行いました。

ロシナンテスは主にワドアブサーレ地域の巡回診療(モバイルクリニック)チームを
サポートしていますが、今回はシャルガニール ローカリティ―の中で巡回診療を行っている
ワディソバとアブデリック地域にまで広げてスタッフのトレーニングを行う事になりました。

1日目は全員で予防接種・乳幼児健診・栄養指導・妊婦健診に関係する知識の再確認を行い
2日目は保健センターで各部署に分かれて実習を行いました。

さて、このトレーニングの中でどの巡回診療チームも直面する色々な問題を話し合う機会が
ありました。

首都ハルツームでは男性医師が女性患者さんを診察する時、必要に応じて触診や
患部を見せる事が診察上当たり前です。(日本のように比較的診察がスムーズに行われます。)

しかし、巡回診療(モバイルクリニック)チームが管轄しているような地方に行くと、

困ったり、戸惑ってしまうような文化や習慣・考え方の違いが村々や部族によって見られます。

例えば、女性の場合は腹痛で巡回診療チームの診療を受けに来たものの、
MA(メディカルアシスタント)が男性だと腹部を見せる事や触診を受ける事が嫌で
診察を受けずにそのまま帰ってしまう事があります。

また、尿検査が必要でも女性の場合は拒否する事があります。

医師が男性で女性が患者さんの場合に多いですが、
医師が女性で患者さんが男性の場合も男性患者さんが拒否する事が少なからずみられます。


また、乳幼児の健診を行っていますが、村によっては赤ちゃんの体重チェックを拒否する
習慣もあります。

これは、健診時にはたくさんの人が集まるため多くの注目が赤ちゃんに集まります。

たくさんの視線は、赤ちゃんに不幸をもたらすという言い伝え(迷信)があるからです。

(実際、1度巡回診療の視察に行った時に、大勢のスタッフがいるのを見てお母さんが帰ってしまった事も
ありました。)
また、元気に育っていると健診は必要ない、病気になった時だけ病院に行けばいいと思う
傾向があります。

さらに、女性は出産後40日間、赤ちゃんと一緒に自宅で過ごし、外に出ないという風習があります。
このため、適切な予防接種の機会や生後赤ちゃんが正常に発育しているか
チェックする機会を逃し、40日後に初めて産まれた事を知ることもあります。
(家族も時々モバイルクリニックのスタッフに赤ちゃんがいる事を内緒にする場合もあるようです。)

 

 

 

 

さて、このような風習に出会った時、モバイルクリニックのスタッフはどのように村人に
対応するのでしょうか?

健診は大切だから!と力強く説得する?、
健診・医療サービスを受けるか受けないは村人の自由だから村人の意志に任せる?、
一度ダメでも何度も訪問して医療の重要性を理解してもらう?

村人の行動変容や意識の改革にはたくさんの方法があると思います。

時に穏やかに、時に情熱的な仕事への想いをこめて村人に診察の重要性や乳幼児健診・予防接種の
必要性を村人に話します。
しかし、決して強制をしたり村人の風習や考えを否定しません。
時には、電話番号だけを渡して「いつでも困った事があったら電話してください」とだけ
伝える時もあります。

月に1回の訪問ですが、何度も訪問し継続的に関わる事で信頼関係を築いていきます。

トレーニングでは村人役、医療従事者役に分かれて、
村人に拒否された時にどのように説明するのか
スタッフ皆でロールプレイを行いました。

ロールプレイ

また、ロールプレイの中では1人の助産師さんが、
「1人目を帝王切開したお母さんがいて、2人目は病院での出産を勧めたけど、
訪問したら自宅出産をした事が分かった。でも、決して怒らず、無事に出産した事だけを一緒に喜んだら、
家に快く入れてくれて産後検診がスムーズだった」というエピソードを話していました。

また、ロールプレイの最中にちょっと意地悪な質問をしてもスタッフ同士が助け合いながら
説明している様子を見ると、とてもいいチームワークが出来ているように感じました。
(私も彼らと一緒に同じように働けたらなぁと心から思います。)

巡回診療で働くスタッフは、肉体的にもとても大変です。
でも、疲れた時も笑顔を忘れず、また村人や患者さんを家族のように思って接するのは
本当に大変な事なので、彼らを見るたびに、素晴らしい仕事をしているなぁと感じます。

また、現在のモバイルクリニックスタッフは固定制ですが今後ずっと継続していくために、
今回の様な他の地域まで広げたトレーニングも今後、また出来たらと思います。

次回も引き続きトレーニングの様子をお伝えします。

巡回診療事業
田中 香子