村落助産師のトレーニング
日本ではクリスマスの時期を迎えようとしていますが、こちら灼熱のスーダンでは
今年最後のモバイルクリニックの活動として村落助産師のトレーニングを行いました。
実は、先日12月18日にワドシュェイン村で栄養に関する健康教育を行う予定でしたが、
村のリーダーの1人が亡くなられたと報告があり、村人全員がしばらく喪に服するため活動の
1つを来年2015年1月に活動が延期した経緯があります。
このため、今回の村落助産師教育には今年の締めくくりの活動としてスタッフ全員が気合を入れていました。
また、このトレーニングのために協力機関であるシャルガニール保健局はもとより、
ハルツーム保健省や助産師学校へ行きトレーニングの内容や使用する教材、ポスターの提供、
また講師の先生としての参加などたくさんの部署とミーティングを重ねて、協力をお願いして来ました。
さらに、研修を受ける助産師さん達はみんなバラバラの地域に住んでいるため、
研修場所である病院まで往復の交通手段(1日1回のみバスがそれぞれの村から出ています)や
食事の準備など(会場となる保健センターがある村にはレストランやカフェがありません。)
日本では普段、簡単にできると思われる事もたくさん注意をはらって準備を整えていかなければいけません。
更に、ロシナンテスがスーダンで活動するためには、HAC(Humanitarian aid commission:スーダンでNGOの活動を管理するところ)から出される移動許可書(トラベルパーミッション)が必要になるため、
許可証の申請も行い準備を整えていました。
さぁ!当日に向けて準備は万端と意気込んでいたところ・・・・、
この、移動許可書が研修の2日前に今回は発行される事が難しいと分かりました。
このため、ロシナンテスのスーダン人スタッフやシャルガニール保健局のユニスさんが電話で各部署に連絡し、
更に休日返上で会場の保健センターへ行きロシナンテスの研修生モハメッド君と2人で
すべて準備してくれました。
当日もロシナンテスのスタッフ(日本人もスーダン人も)助産師トレーニングの会場には行く事が
できませんでしたが、常にシャルガニール保健局のユニスさんから電話で報告を受けながら、
トレーニングの状況を確認していくと言う形になりました。
今回の研修内容は感染対策と分娩キット(分娩に必要な器具)の消毒方法の復習と知識の再確認です。
出席者の助産師さんたち。
助産師さん達はほぼ全員、読み書きできません。
このため、先生の話を熱心に聞いています。
講義の後は、実践です。
5人ずつのグループに分かれて分娩キットの消毒を実際に行います。
消毒薬の濃度や器具を浸しておく時間はバッチリ覚えているかな?
最後には無事みんな間違いなく手順を確認できました。
研修を終えた証として「認定証」を渡して無事終了となりました。
この研修で、助産師さんたちに各自の分娩キットを持ってきてもらいましたが、
分娩キットの中身が不十分だったり、その他診療に必要な血圧計、体温計など不足している事が
多い事もわかりました。
赤ちゃんの臍の緒を切るハサミが無くて患者さんを搬送したケースもあるようです。
また、日本とは違い助産師さん達は村人のお産に立ち会う時に決まった料金を請求しません。
村人から分娩費用として100スーダンポンド(日本円で約2000円)お金をもらえる事もあれば、
食事で支払いが行われる事や無料の事もあるようです。
年に1回、村の助産師さんたちは助産師免許の更新時に保健省へ行き、
その時に仕事に必要な診療器具の補充をしてもらえるそうですが、
時間もコストもかかるため仕事をするのに必要な物品を完全に揃える事が難しいのも現状なようです。
ロシナンテスが村落助産師さん達のために分娩キットを全てそろえる事は難しいですが、
保健省と検討し何か良い方法がないか一緒に考えていく必要があります。
子どもの誕生は世界共通でとても神聖なもので、これから私達の社会を担ってくれる大切な存在です。
その命の誕生を支えている助産師さん達がもっと快適に仕事ができ、
1人でも多くの命を助ける事が出来るよう一緒に考えていきたいと思います。
母子保健担当
田中 香子