スーダンで地震が起こったら
現在、新しい事務所に必要な家具を買っているところ。ほぼ買い揃えたが、困っているのが洋服ダンス。高級店には立派なものがあるのだが、すべて輸入物で驚くほど高い。そこで、ローカルマーケットに行くのだが、これがまた驚くほどちゃちなのだ。作りはがたがた、新品なのにまともに扉が開かない。中古品にいたっては本当に扉が開かない。これではいくら安くても買う気にならない。ということで、今のところ部屋にロープを張りそこにスーツなどをかけて済ませている。しかし、どうしてスーダンの家具職人はこうもダメダメなのか、テーブルなどもローカルの手作りのものはまず足がまっすぐになっていないなど、小学生の図工でもこうも下手な物はできないという代物ばかりだ。
よく言えばおおらか、悪く言えばいいかげんなスーダン人の性格を反映してか、家具作りだけではなく家作りにも同じことが言える。新しい事務所は一般的なスーダンの一軒家なのだが、古いこともあるが、初めから立て付けがひどくスムーズに開閉するドアなど一つもない。先日は普段使わない(多分始めて使った)コンセントからコンセントを抜こうとしたら、差込口ごとズボッと壁から抜けてしまった。コンクリートがあまりにも脆くコンセントを抜く力に耐えられなかったのだ。こんな調子で、あちこちがボロボロ崩れている。コンクリートの値段が高いようで、砂を多く混ぜているのだろう。
家の建て方自体が、日本の基準から言えばあまりにも簡単。こちらの家は一般的に日干し煉瓦を積み重ね、周りにコンクリートを塗って整えるだけの構造。建物によっては日干し煉瓦がむき出し、もしくは通りから見える部分だけコンクリートを塗っている建物も。柱には申し訳程度の鉄筋が入っているだけ。10階以上のビルも基本的にこの方法。地質上スーダンでは地震がないのでこれで大丈夫なのだが、ひとたび地震が起こればほとんどの建物は崩壊するだろう。
スーダン人の本来の生活はとてもシンプル。家は広い間取りで天井は高く家具も少なく広々としている。このほうが、スーダンの高温乾燥の気候に合っていて、冷房などなくても中は涼しく保たれる。(最近は冷房が効くように間取りも狭く天井も低い部屋が増えているようだが。)食事も地面にござを引いてみんなで食事を囲んで食べるのが本来のスタイル。テーブルもいらなければ、荷物も少ないので収納する家具も要らない。需要がないので技術も育たなかったということか。家も地震がなくいらない補強もないのですぐに壊せるし建て直しも簡単、日干し煉瓦はすぐ土に返っていく。乾燥地帯で木も少ないので、家具も必要最小限にとどめる。スーダン人の暮らしは、この風土ではとても理に適っているし、地球に優しいのだ。
霜田治喜