スーダン2007.10.14
青いズボンに青いシャツの男
スーダンで生活をしていると
たまに、ものすごい不条理にぶつかる。
(それはカフカの「城」を彷彿とさせる)
何かの手続きにおいて
役人に迂遠かつ理不尽な対応をされ
「いったい、どうしろと言うのだ?」と
感情をふつふつとさせながら帰路につく。
たとえばそんなとき
家の前でわーっと走り回る子ども達を
みるだけでもいいし、
時間があれば
土の上にどっこいしょと座って
彼らの目線で一緒に遊ぶ。
すると日々のくだらない些事は
あっという間に消散していく。
僕の一番のお気に入りは
隣の家の2歳の男の子。
名前はムーミン。
アラビア語で信徒という意味である。
ムーミンの世界は家を中心として半径30メートル。
その中を彼の小さなお兄ちゃん達に
いつも手を引かれている。
毎日お兄ちゃんたちは路地でサッカーをする。
ガラスの破片が土の上に散っていても
みんな裸足である。
まだ小さなムーミンはサッカーに参加できないので
壁際でにこにことそれを眺めているのだが
急に歩いてボールの横に飛び出したりする。
危ないので、
僕とムーミンはサッカーの間、
その脇で遊ぶようになった。
それから2ヶ月。
近頃ムーミンは僕に会うと
お菓子やよだれでベトベトになった手を握手のために伸ばしてくる。
握りつぶされ、汗で湿気たクッキーを僕にもわけてくれる。
(果たしてあれは汗なのだろうか?)
家に帰るときは小さな小さな手でバイバイをしてくれる。
かわいい。
今日は近所に子どもたちの声が響かなかった。
断食明けの祭で、
家族総出で親戚や友人の家を訪れているのであろう。
気分転換に外を歩いても友達がいない・・・
荒井繁