村の自宅出産
昨年の4月から本格的に始まった母子保健事業。
村での診療所助産師介助による分娩件数も25件を超えました。
(ちなみに、プロジェクト開始前は、1件しかありませんでした。)
村の女性は、自宅での出産を強く望みます。できるだけ病院には行きたがらない傾向にあります。
病院に行く=「お金がかかる」「行くための交通手段がない」「家族が近くにいられない」「薬を使用される(と思いこんでいる)」などなどいろいろな問題があるからです。
そして、村での伝統的な分娩は、「妊婦の陣痛が始まった」という噂をどこからともなく聞きつけて家族や親戚だけではなく、近所の女性が皆集まってきます。
(こんな感じです ↓ )
小さい家の中に、女性がぎゅうぎゅうにひしめき合って、お母さんと共に分娩に臨みます。
病院なら、「家族1~2人を除いて、外に出ていてください」といえますが
自宅に助産師が介助に行くときには、村の風習を尊重します。
病院のなかで一人分娩に臨むよりも、いつも過ごし慣れている家で、
家族や知り合いとお産を迎えることが
「安心」で、それが村の女性にとって、あたりまえの「分娩」なのです。
妊婦の別の子どもも近くにいて、おばあちゃんや姉妹が紅茶や食べ物を用意し
そこにいるすべての女性たちのために、お香がたかれます。
(この1枚をパーテーション代わりに、布の奥のベットにお母さんが横たわっています。)
いよいよ赤ちゃんが生まれるぞ、というときは、ベットの周りに多くの人がやってきて、
(「邪魔なんですが・・・」と言いたくなるほど)手伝ってくれようとします。
そして、赤ちゃんが生まれ、無事に胎盤が娩出されたのを見届けて、
甲高い声を出して「ウョ~ウョ~ウョ~」と伝統的な祝福の雄たけびを皆であげます。
(個人的なことですが、最初はこの雄たけびがあまりに異様で怖かったのですが
最近この雄たけびを聞くと、
あ~無事に今回もお産が終了した!とホっとするようになりました 笑)
お母さんはぐったり疲れていますが、どんなに疲れていようが構わず、周りは一人一人お母さんのもとを訪れ、祝福を伝え、握手をして喜びます。
これが村の伝統的な出産です。
お母さんと子どもは、このあと40日間、ベットの上から基本的に動かず家の中で過ごさなければなりません。隣の家であろうと、外に出ることは良しとされていません。
誕生の瞬間を多くの人に見守られ、生まれてきたことを皆が喜びあう
大切な命。
すくすくと育つことを祈ります。
昨年6月に行った女性調査にて5歳以下の子供185人中、44名の子どもが低栄養児とされました。
その6ヶ月後、川原と岩木の協力を仰ぎ、
追跡調査にて44人のうち30人の栄養状態を再チェックしました。
なんと、6か月のうちに、4名もの子供が低栄養と何らかの関わりをもつであろう理由で亡くなっていることがわかりました。
この事実を受けて、母子保健チームで協議を重ね、
ハサバラ診療所に栄養センターのような機能を導入することにしました。
これから、保健省も交え、新たな取り組みを開始します。
来年からは、乳幼児健診と低栄養児へのフォローアップが始まる予定です。
*さて、わたくし事で恐縮ですが、3月をもって、
次年度後任の成田に引き継ぎを終え、日本に帰ることになっています。
帰国まで2週間となり、毎日切ない日々を送っている辰野より