特定非営利活動法人ロシナンテス

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スーダン2011.02.05

旅立つ命①~アッタ君との出会い~

1月の中旬から、去年の6月に行った調査で『低栄養』とされた子供の栄養状態の再調査をスタッフの岩木にも手伝ってもらい、実施しています。

前回の調査は全ての子供を対象にしたわけではありません。村の子供のごく一部の栄養状態を調べているにすぎませんが、村を調査をすればするほど、やはり低栄養である子供たちがたくさんいることがわかります。

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その調査で出会うことになったアッタ君のことを今日はお話しします。

1月の中旬、その日の調査の最後の一件を選定するため、たまたま手にとった再調査用紙。
そこに載っていた名前がアッタ君でした。

6カ月前の年齢が1歳8カ月で6kgとあります。極度の低栄養状態です。
今は2歳になっているはずです。
2歳の男の子であれば、だいたい11kg前後であるはずです。

訪れた家に、母親の胸に抱かれてアッタ君は横たわっていました。

くるまれた布の中のアッタ君を覗き込むと、
アッタ君は力強い目でじっとこちらをみつめていました。
ただ、子供特有の活気がまったくありません。
目の周りがくぼみ、顔全体がげっそり、髪の色も変色し、呼吸も早く、必死に生きているという感じが伝わってきます。

すぐに病院に連れていくことにして、念のため体重を計ると
6kg、6か月前と変わっていません。

お母さんに、何を食べているのか聞くと、母乳だけと答えます。

なんで母乳だけなんだと聞くと、6か月前から病気になって食べられなくなったと言います。

病気になって、病院には行ったのかを尋ねると
お金がなかったと答えました。

子供の栄養状態が、家庭の経済状況と親の育児に対する知識不足と密に関わりを持っていることに、悲しさとあてのない苛立ちを覚えながら、とりあえず病院に急ぎました。

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ハサバラヘルスセンターでの治療には限界があり
すぐに輸血が必要な重度の貧血に対応できません。

医師も搬送をすすめ、近くにある地方病院に急ぎます。

この時のヘモグロビンの値は5.1でした。(正常値は11~14です。)

輸血がすぐにでも必要です。
しかし、輸血用のルートを確保するのにも、ひと苦労です。
末梢がしまっていて、なかなか点滴がとれません。

お母さんの代わりに、アッタ君を抱いて、点滴挿入の介助をしていたのですが、余っているエネルギーを振り絞って、小さい身体が必死で抵抗します。

お母さんもその姿をみながら、静かに流れる涙が止まりません。

私はお母さんにかける言葉がみつかりませんでした。

この日から、アッタ君の病院での闘病生活が始まります。
(実際には、ずっと前から闘病していたことになりますが)

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これが、私がアッタ君と出会った初めての日です。

つづく

辰野