授かった命
ハサバラを不在にして2週間。
村に帰ってから、どうしても訪れたい場所がありました。
嶋井さん(12月にハサバラ村に来てくださった助産師さん)に、「これは、もしかして双子?」と判別された妊婦さんが、2人の男の子を無事に診療所で出産したという情報を得ていたからです。
このお母さん、妊娠中に高血圧、足にかなりのむくみがみられ、腎臓の働きが悪くなりました。そのまま放っておくと、母・子供の命に影響がいつでてもおかしくない状態でした。
嶋井さんと一緒にこのお母さんをガダーレフ市内の母子病院に搬送し、毎日のように病院に足を運び、血圧をコントロールするなど、かなり手厚くフォローしたという、思い入れの深いお母さんなのです。
このお母さんが、無事に子供を産んだと聞き、ホッと胸をなでおろし、「おめでとう」を伝えに家に訪問に行きました。
旦那さんは、事情があって家にはおらず、収入もなく、かやぶきの小さな家でおばあさんと子供で暮らしています。
この時期の村は、朝は冷え込み、とても生まれたての赤ちゃんが温かく暮らせる環境ではありません。
写真に一緒に写っているのは近所の人たちです。
いつも私たちが行くと、やってきては、ただ後ろで見ています。
元気そうなお母さん、ベットの上では、赤ちゃんが2人横たわっています。
すると・・・
布にくるまれた中から見える赤ちゃんの顔が
なんと、痩せこけ、目がくぼみ、あばら骨がくっきり見え、なんとも活気がありません。
おめでとうを伝える前に、口から出た言葉は、
「なぜ?」でした。
ぽかーんとしているお母さんに、おっぱいはでてる?と聞くと「おっぱい、ない」と言います。
だったらなんで病院にこないのか?という疑問が頭をよぎりますが、そもそも「危険」だということがわからなければ、来ようとも思うはずもなく、これまでの彼女たちの行動パターンを見ていれば、やはり産まれた後のフォローも徹底すべきだったと反省しました。
脱水状態に陥っていたため、Drのもとに連れて行き、診察を受けさせました。
1,7kg、1,9kgの小さな身体で懸命に生きていた二人、脱水という状況が、この二人にとってどれだけ恐ろしいものか
お母さんも家族も知る由もありません。
やっとの想いで生まれた命。
この村では、生まれるまでも戦い、
産まれてからが、本当の闘いなのだと、
そう再認識した双子のケースです。
つづく 辰野