月明かりのもとでの祈り
ハサバラ村にいます。
日本の友人から届くメールには、日本は20度を下回るようになり、秋の訪れを感じさせる心地よい季節とありますがこちらはまだまだ猛暑を忘れさせてくれません。
電気のないハサバラにいると、冷たいコーラをガブガブ飲みたい衝動にかられます。小さな願いも届くことなく、昼間はまるで脳みそが溶けて、思考能力が鈍っているような感じです。
外に出ると来ている長袖の上に、ずっしり太陽の重みを感じ、これが長袖ではなかったらとっくに焦げ付いているんだろうなとぞっとします。
前置きが長くなりすぎました。
そんな暑いハサバラ村も、夜には心地よい風が吹きます。
昼の暑さを忘れさせてくれる、数日前のある夜。
診療所で赤ちゃんが生まれました。プロジェクト開始以降14人目の赤ちゃんでした。
妊婦さんは7~8ヶ月(妊娠週数が特定できません)の早産、逆子、赤ちゃんは1890gととても小さい女の子でした。
非常にリスキーな出産でしたが、診療所に訪れたときには出産の段階もすすんでおり、救急車で病院に送ることがが逆に困難とされ、診療所で医師立ち会いのもとでの出産となりました。
診療所に到着してから2時間。早産・逆子というリスクを抱えながらも、赤ちゃんの産声を無事に聞くことができました。部屋の外には、ご近所さんや、その親戚(主に女性)が30人ほど心配そうに待っていましたが、
赤ちゃんの産声を聞いて、皆が嬉しそうに手をとり合っていました。
赤ちゃんが生まれてから3時間くらいたち、赤ちゃんとお母さんの状態が問題ないことを確認し、診療所の助産師が一番初めに行ったことは、「祈祷」でした。
イスラム教徒は1日に5回祈りの時間があります。
もちろん仕事で遅くなった時も、欠かさず祈ります。
その日はたまたま満月で、夜の12時過ぎに月は頭上に昇り、
地面に直接マットを広げてお祈りをする彼女の姿が、月に照らされて、神秘的で美しいなぁと思えたのでした。
普段より時間をかけて祈る姿から、出産を無事に終えることができた神への感謝が私にも伝わってくるようでした。
日本のように、出産後特に問題がなければ入院というシステムをとらないスーダン。
その後も何度か家にでかけて様子を見ていますが、赤ちゃんもお母さんも元気そうに暮らしています。
たつの