鳴らない電話
某社の「なめ茸」を食べた。
ここでの希少性も加味すると
箸までねぶりたいぐらいの味である。
夏に来た学生が持ってきてくれた一瓶の日本食。
スーダン料理も美味しいのだが
使われる油の量が多いので
疲れたときにはさっぱりとした日本食が胃にありがたい。
もうなくなってしまうのかと名残惜しげに
なめ茸のビンの裏を見る。
何気なく視線を走らせた原材料の欄には
「ポークエキス」
おお、ここにも使われていたか。
豚肉好きにとってはミラクル調味料のポークエキス。
某日本人のイスラーム教徒の方がなめ茸を食べて「こりゃうまい」
と言っていたが、それは禁じられた味だったのだ。
イスラームで「豚肉」が禁じられていることは
日本でもよく知られていると思うが、
クルアーンに豚肉について書かれた箇所があるので
日本ムスリム協会の「聖クルアーン」から引用する。
「あなたがたに禁じられたものは、
死肉、(流れる)血、豚肉、
アッラー以外の名を唱え(殺された)もの、
絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、
角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、
(ただしこの種であっても)あなたがたがその止めを刺したものは別である。
また石壇に犠牲とされたもの、くじで分配されたものである。
これらは忌まわしいものである。」第5章3節(フリューゲル版では4節)
同箇所の井筒俊彦さんの訳(岩波文庫で入手可能)は
「汝らが食べてはならぬものは、
死獣の肉、血、豚肉、
それからアッラーならぬ(邪神)に捧げられたもの、
絞め殺された動物、打ち殺された動物、墜落死した動物、
角で突き殺された動物、また他の猛獣の啖らったもの
(この種のものでも)汝らが自ら手を下して最後の止めをさしたもの
(まだ生命があるうちに間に合って、自分で正式に殺したもの)はよろしい。
それに偶像神の石壇で屠られたもの。
それからまた賭矢を使って(肉を)分配することも許されぬ
(人々が集まってする賭。
矢をくじの代わりに使って運をきめ、賭けた駱駝の肉を取る)。
これはまことに罪深い行いであるぞ」第5章4節
まさか、なめ茸にまで豚が入っているとは。
日本に留学していたイスラーム教徒の友達が
「日本での食事は大変です」と歎いていたが
なるほど、油断は出来ないのだね。
荒井繁